Research Abstract |
マングローブ・キリフィッシュの雄の人為作出と交配実験 高成長多産系統と低成長少産系統について,初期発生期の水温変化による雌雄同体と雄の性比のコントロールを試みた。本種の至適飼育水温は25℃前後であるが,20,25,30℃の3段階の水温で卵発生を促し,成魚となるまで飼育し,性比を見たところ,低水温(20℃)で卵発生させた群から,比較的多くの一次雄が出現した。このことにより,本種の遺伝的に異なる2株間の交配実験を実施するための基礎が出来た。併せて,雌雄同体魚および雄のステロイドホルモンの動態を確認したところ,本種は機能的性に関わらず,雄性ホルモンと雌性ホルモンを同時産生することが世界ではじめて明らかになった(研究発表1の論文)。得られた供試魚を用いて,高成長多産系統と低成長少産系統の同系統間および異系統間で,雌雄同体と雄のペアを実験水槽内で作り,繁殖行動の有無と受精卵が得られるかどうかを検討するために,まず,本種の生殖腺の形態学的な観察を詳細に行った。この成果は,現在Ichthyological Research誌に投稿中である。 遺伝的変異の検索 本種の遺伝系統の確認には,古典的なサザンブロット法が用いられてきたが,解析に用いるサンプル量が多く,小型魚である本種の解析に不向きであった。そこで,遺伝的変異を詳細に調べ,かつ少量のサンプル量で解析可能なAFLP法によって,高成長多産系統と低成長少産系統のそれぞれに特異的な遺伝子マーカーの検索・特定を試みた。AFLP^<TM> Plant Mapping Kit (Applied Biosystems)を使用し,AFLPの一連の操作は本キットのプロトコルに順じた。4つのプライマーセット(MseI CAA-EcoRI ACC, MseI CAC-EcoRI ACC, MseI CAG-EcoRI ACC, MseI CTC-EcoRI ACC)による塩基数50〜500bpの範囲のDNA断片からDNA多型解析を行った。その結果,高成長多産系統に5個,低成長少産系統に10個の,それぞれのクローン系統に特異的なDNA断片を検出し,これらの再現性は100%であった。このことから,これら計15のDNA断片を,各々のクローン系統を識別する遺伝子マーカーとすることで,今後の交配実験に適用可能であることが明らかになった。この成果は,現在投稿論文として取りまとめている。
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