2005 Fiscal Year Annual Research Report
浅海魚類資源における適応的形質の緯度間変異に関する生態遺伝学的研究
Project/Area Number |
17780156
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
小北 智之 福井県立大学, 生物資源学部, 助手 (60372835)
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Keywords | 適応進化 / 気候適応 / 魚類 / 緯度クライン / 繁殖形質 / 初期生活史 / 進化生態学 / 進化遺伝学 |
Research Abstract |
南北に広い日本列島周辺に生息する温帯性魚類資源においては,緯度(気候)クラインに対する適応的形質の遺伝的分化が存在する可能性がある.このような局所適応の実態を解明するために,日本各地で水産資源として重要なハゼ科のシロウオLeucopsarion petersiiを対象に共通環境飼育実験を用いて緯度集団間の繁殖形質や初期生活史形質における変異パターンについて検討した. 研究代表者はDNAの塩基配列分析からシロウオには遺伝的に大きく分化した日本海型と太平洋型が存在することを明らかにしている.本研究では,シロウオ日本海型を対象とし,緯度の大きく異なる佐賀県浜玉町産(低緯度集団),福井県小浜市産(中緯度集団),青森県鰺ヶ沢町産(高緯度集団)のものを飼育実験に用いた.3地域の河川に産卵遡上したシロウオを13℃と18℃の2水温区で水槽内繁殖させ,卵サイズ,産卵数,繁殖努力(乾燥卵重量×産卵数)といった雌の繁殖形質を比較した.さらに,3地域の複数の親魚から得た孵化仔魚を水温,日長,餌量などのレジームを共通にした水槽内で育成し,成長速度や形態発育速度(特に摂餌や遊泳に関連する形質)の比較を行った. 測定した雌の3つの繁殖形質は,いずれも雌の体長と正の相関があったが,飼育水温による影響は認められなかった.緯度集団間で卵数には変異は認められなかったが,高緯度集団の卵サイズと繁殖努力は有意に大きかった.このような卵サイズ変異の影響で孵化仔魚サイズは高緯度集団で大きく,その後の共通環境下での成長速度も高緯度集団で速かった.一方,形態発育速度に関しては,時間ベースでは高緯度集団のほうが速い傾向があったが,同じ体サイズ(全長)で比較すると低緯度集団のほうが形態発育が進んでいた.本研究では,親魚の飼育開始以前の環境履歴の影響を無視することはできないが,日本海産シロウオの様々な適応的形質に緯度集団間の遺伝的変異が存在する可能性が示唆された.
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