Research Abstract |
わが国の農業は,アジアモンスーン地域としての風土の影響を受けながら固有の性格を与えられているが,それは水田中心の農業の展開や農業水利のあり方といった側面に表れてもいる.こうした風土の違いによって,農業や農業水利のあり方は違いを見せることになる. 研究計画初年度においては,わが国とは異なる風土を有する乾燥・半乾燥地域国における農業水利の基本的性格について,その実態的アプローチから調査・検討を加え,国際比較を行った.日本とは風土が異なる地域国として,アメリカ(カリフォルニア州)とオーストラリアを取り上げた.それは,両国が日本とともに先進国であり,さらには経済と社会の成熟化に伴って,水資源の開発と利用のあり方,ことさらに農業水利のあり方が問われているからである. 国際比較を行うにあたっての視点を(1)灌漑農地と水管理,(2)農業水利制度と水利権,(3)灌漑概織の性格,(4)水資源需給構造の動向の4つに設定した上で,農業水利の基本的性格を特徴付けうる各種属性(農地の存在形態,末端の水利用方式,水利用単位,水利権の種類,水利権の性質,水配分方式,水料金体系の原則,灌漑組織の種類,灌漑組織と水利用者との関係)に関するデータを実態調査ならびに文献解析により取得・整理したところである. 以上のような作業をもとに検討した結果,農業水利の国際比較の手法として,比較制度分析,すなわちどのような農業水利制度が優れているかではなく,それぞれの条件下でいかなる農業水利制度が選択されてきているかという問題を考察することが有用であることを確認できたとともに,その基礎的研究作業を完了したところであるといえる.
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