2007 Fiscal Year Annual Research Report
マグロ需給・市場の変容・再編成と資源の持続的利用に関する流通・経済学的研究
Project/Area Number |
17780177
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山本 尚俊 Kinki University, 水産研究所, COE博士研究員 (00399099)
|
Keywords | 養殖マグロ・ビジネス / 市場競争構造 / VMS(垂直的マーケティングシステム) / 養殖経営 / 国際規制・制度 / 生産・販売原価・収益 / 競争優位 / 養殖国間の相対比較 |
Research Abstract |
研究計画に即し、本年度の検討内容及び得られた知見は次の通りである。 1.養殖マグロ・ビジネスを巡る中小業者の競争対応の検討 輸入・販売業務を巡る大手の寡占化が強まるなか、養殖合弁化を梃子に共同出資者に国内流通資本を組み込み、当該業者の販路や機能を内部化することで自社の販売力の補填や取引リスクの分散・回避を具現化し、養殖生産〜国内販売を網羅するVMSを構築することで市場シェアの確保に対応する中小業者が現れた。競争条件の強まりが、中小輸入業者と市場卸、仲卸など、従来、売り手と買い手の立場にあった業者らを、市場シェアの拡大や同業他社に対する競争力強化という共通課題のもと相互の機能補填・組織化へと導く局面に差し掛かったことが確認された。 2.マグロ養殖経営を巡る生産・販売原価及び収益水準の推定 地中海・メキシコは原魚が生産原価の50%、餌料費20%前後、人件費12%、日本は順に7%・54%・26%を占めた。築地の生鮮価格をもとに収益動向を試算すれば、各国とも2000年はほぼ年間を通じ採算確保が達成されるが、03年の水準低下は著しく、地中海は周年、日本は2・3月に原価割れが確認された。地中海は漁獲・養殖両面の規制強化、供給量を大幅超過する養殖需要の存在が原魚・餌料確保を巡る競争と当該経費の上昇を誘発している。メキシコは日本同様、規制は弱いが、安価な前浜餌料や輸送上の優位等が低コストの養殖生産を可能にする。日本は原魚採捕の不確実性に加え、幼魚の長期飼育という経営条件に起因して斃死率が高い、などの特徴が明らかとなった。 多段階の水平的競争の激化や収益低下が川上〜川下の垂直的連携、主体間の距離の短縮を促すなどフードシステムの構造変動を誘発する一方、川下による矛盾・問題の外部化に道を開くなどシステム内部の捩れをも生じさせており、その打開・調整が資源持続的利用型フードシステムの構築上、不可欠と考える。
|
Research Products
(1 results)