Research Abstract |
昨年までの調査結果から,不耕起水田の一筆減水深が大きいことや,漏水量の面的バラつきが大きいことが明らかになった.これらは水田を表面から捉えたものであり,得られた結果についてより詳細に検討するためには,水田を土層から捉えることが必須である.そこで今年度は不耕起水田の土壌断面を把握し,区分された土層(層位)の土壌物理性を明らかにすることを目的とした. 対象圃場はこれまで同様の茨城県河内町の不耕起水田である.湿性集積水田土で,母材は河川堆積物,地形は河川後背地平坦部である.この水田の不耕起部と畔畦付近の代かき部において土壌断面調査および採土を行った.なお,地下水位は,非稲作期に45cm程度である. 土壌断面は,土壌構造の発達が極めて弱い第1層(作土層)は,不耕起部は6cm,代かき部では18cmだった.これは,それぞれ代かきによってこの深さまで土壌が撹拌されたことを示している.第II層はともに23cmまでで,代かき部は耕盤が見られるが,不耕起部では旧作土層,耕盤層ともに変化して,耕盤はなくなってきている.構造の発達は,弱い亜角塊状構造である.鮮明な膜状,糸根状斑鉄が非常に富み,酸化的環境ではあるが,不耕起部が厚い層なのは,根成孔隙の保存が原因であると考えられる. 土壌の物理性は,不耕起部では,土壌断面に見られたのと同様に,土壌硬度においても耕盤を示すピークが見られなかった。また第III層以深では,代かき部より不耕起部の方が硬度が高かった.これには,根成孔隙の量の差が影響していると考えられる.また不撹乱土の飽和透水係数は,代かき部は秋に代かきしたばかりであるために低い値だったのに対し,不耕起部ではバラついた。また,耕盤に相当する深さや,それ以深の透水係数に高い値が見られた.これは,構造の発達や根穴,土性の影響が考えられるが,より詳細な検討を要する.
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