2006 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク高発現系開発を目指したmRNA安定化機構の解明
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17780208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永岡 謙太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (60376564)
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Keywords | mRNA安定性 / カゼイン / ARE配列 / HuR / AUF1 / RNAi / 3'UTR |
Research Abstract |
本研究は、ミルクタンパクの一つであるカゼインmRNAの安定化制御機構を解明することで、ミルク中タンパク発現系の改良を目指すものである。本年度の成果として以下に報告する。 1.カゼインmRNAの高い安定性の維持には、長いpoly(A)tailと3'UTRのARE配列がタンパク複合体を介して相互作用することが必要とされる。単にカゼイン3'UTR部をルシフェラーゼレポーター発現ベクターに組み込んでも高いルシフェラーゼ活性は得られなかったが、ホルモン刺激を加えることでその活性が増加することから、カゼインmRNAの高い安定性を再現するには、泌乳期に特異的に変化するmRNA結合タンパク質の存在も考慮する必要性が示唆された。 2.実際に乳腺分化過程における主要mRNA結合タンパク質(HuR、AUF1)の局在変化を解析した結果、乳腺分化に従ってAUF1タンパクの局在が細胞質から核内へ移行していることが明らかとなった。また、乳腺分化のマーカーであるカゼインmRNAの発現増加、c-mycおよびcyclin D1 mRNAの発現低下が見られた。mRNAの安定化は一般に細胞質内で機能することが知られていることから、細胞質からのAUF1タンパクの消失は、乳腺分化過程において何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。 3.RNAiノックダウン法を用いて細胞質からのAUF1タンパクの消失を再現することにより、カゼインmRNA発現増加とc-myc mRNAの発現低下の促進が見られ、逆に強制発現を行うことにより、カゼインmRNA発現低下とc-myc mRNAの発現増加が見られた。 4.RNA-タンパク免疫沈降法により、AUF1タンパクのc-myc mRNAへの結合は見られたが、カゼインmRNAへの結合は認められなかった。 本研究により、カゼインmRNAの安定化機構が明らかとなり、さらに乳腺分化過程においてmRNA安定化機構が細胞分化自体に重要な役割を果たす可能性を示した。今後、より本研究を発展・応用させタンパク高発現系の開発を目指していきたい。
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