2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17780211
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小川 英彦 東京農業大学, 応用生物科学部, 講師 (20339089)
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Keywords | 雌核発生胚 / 雄核発生胚 / マウス / 栄養膜幹細胞 |
Research Abstract |
哺乳動物は、卵子と精子とが受精することで個体発生する。一方、片親性ゲノムしか持たない雌核発生胚や雄核発生胚は、マウスでは妊娠9.5日に致死となる。これらの受胎産物の形態的特徴として胎盤の形成不全が挙げられる。以上のことから、雌雄両ゲノムが胎盤形成に必要であることは容易に想像できるが、どのようなメカニズムで関与するかは明らかにされていない。そこで、胎盤形成における雌雄ゲノムの役割を明らかにするために、雌核発生胚および雄核発生胚から栄養膜幹細胞(TS細胞)を樹立し、その細胞特性を明らかにすることを目的とした。 マウス排卵卵子を人為的活性化することにより、雌核発生胚を作出した。また、排卵卵子から分裂装置を除去後、体外受精を施し、雄核発生胚を作出した。体外培養後、得られた胚盤胞から常法に従いTS様細胞株を作出した。雌核発生胚および雄核発生胚からそれぞれ5株および6株のTS様細胞が樹立できた。樹立できた細胞株が未分化能を有しているか検証するために、5つの未分化マーカー遺伝子(Eomes,Cdx2,Fgfr2,Ap2a, Errb)の発現を調べた。その結果、それぞれ2株ですべての遺伝子の発現が認められたが、残りの株は共通してCdx2の発現が認められなかった。次に5つの未分化マーカー遺伝子の発現が認められたそれぞれ2株について分化誘導を行った結果、雄核発生胚由来TS様細胞では栄養膜巨細胞が観察された。これらの細胞は栄養膜巨細胞特異的発現する遺伝子Pl-1,Hand1が発現していた。一方、雌核発生胚由来TS様細胞では栄養膜巨細胞は観察されず、Pl-1,Hand1の発現も認められなかった。以上の結果から、雄核発生胚由来TS様細胞は栄養膜巨細胞へ分化できるのに対し、雌核発生胚由来TS様細胞は分化できないことが明らかとなった。従って、栄養膜巨細胞への分化には、雄ゲノムが関与していることが示唆された。
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