2005 Fiscal Year Annual Research Report
DNAマイクロアレイを用いた新規多指標型環境汚染物質検出法の開発
Project/Area Number |
17780241
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川田 耕司 北海道大学, 大学院・工学研究科, 学術研究員 (20374572)
|
Keywords | DNAマイクロアレイ / 環境汚染物質 / 重金属 / 酸化ストレス / タンパク変性 / 発癌性 |
Research Abstract |
本研究では、まず化学物質の作用をタンパク変性、酸化ストレス、発癌性の3グループに分類し、モデル物質として、フェノール(タンパク変性)、過酸化水素(酸化ストレス)、ニトロソアミン、マイトマイシンC(発癌イニシエーター)およびTPA(発癌プロモーター)を暴露したヒト肝癌由来細胞株HepG2におけるDNAマイクロアレイ(8795のヒト遺伝子を搭載)解析を行った。さらに代表的な有害重金属であるカドミウム、ニッケル、ヒ素、水銀、クロム、マンガンおよびアンチモン高濃度暴露細胞についても同様の検討を行い、遺伝子発現パターンを比較した。統計学的処理により選定された1250遺伝子の発現変動パターンを階層型クラスタリング法によって分類したところ、5種の重金属(Cd、As、Hg、Cr、Mn)およびNiは過酸化水素、フェノールとそれぞれクラスターを形成し、これらの重金属の主要な毒性作用が酸化ストレスおよびタンパク変性であると推測された。さらに、重金属の濃度依存的毒性作用を検討するため、ヒ素について高濃度暴露および低濃度暴露群の遺伝子発現パターンについて比較を行った。その結果、低濃度のヒ素はニトロソアミン、マイトマイシンC、TPAとクラスターを形成し、特にTPAと近縁な位置を占めていた。これらのことから、高濃度のヒ素は上述のように酸化ストレス作用を有する一方、低濃度のヒ素は発癌プロモーター作用を有すると推測された。重金属は有害性が明らかである一方、その毒性機構については未知の部分が多いため、本研究で得られた知見は毒性学的にも有用な情報であると考えられる。 以上の結果より、DNAマイクロアレイ解析を用いることにより、化学物質の毒性を分類、評価可能であることが示された。本研究で用いた手法は、環境汚染物質の検出および新規化学物質のリスク評価に有用であると考えられる。
|