2006 Fiscal Year Annual Research Report
DNAマイクロアレイを用いた新規多指標型環境汚染物質検出法の開発
Project/Area Number |
17780241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川田 耕司 北海道大学, 大学院工学研究科, 博士研究員 (20374572)
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Keywords | DNAマイクロアレイ / 環境汚染物質 / 重金属 / 酸化ストレス / 発癌性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き代表的な環境汚染物質である重金属について、DNAマイクロアレイを用いた毒性評価を試み、本手法の有用性について検討を行った。供試重金属としてカドミウム、ニッケル、ヒ素、水銀、クロム、およびアンチモンを用い、これらを高濃度で暴露したヒト由来細胞における網羅的遺伝子発現パターンを解析した。また比較のためDMNQ、ニトロソアミンおよびフェノールについても同様の検討を行った。その結果、全ての供試重金属は酸化ストレス物質であるDMNQと類似したパターンを示し、高濃度金属暴露における主要な毒性作用が酸化ストレスであることが示唆された。 さらに本研究では、重金属の慢性毒性として重要な発癌性についても検討を行った。上記のうち特に発癌との関連が示唆されているカドミウム、ニッケル、ヒ素について低濃度長時間の暴露を行い、その遺伝子発現パターンを、代表的な発癌性物質であるニトロソアミン、TPAおよびテトラクロロエチレンと比較した。その結果、供試重金属による発現遺伝子のおよそ30%が各種発癌性物質と共通しており、特にTPA、テトラクロロエチレンで認められた細胞増殖の促進に関わる遺伝子の発現が重金属暴露においても認められた。また、供試した全ての発癌性物質および重金属において発現上昇が認められる遺伝子PTTG1を見出した。本遺伝子は、発癌との関連が強く示唆されており、発癌性物質特異的遺伝子マーカーとしての有用性が期待される。 以上の結果より、DNAマイクロアレイ解析を用いることにより、化学物質の毒性を分類、評価可能であり、また、有用なマーカー遺伝子の探索が可能であった。本研究で用いた手法は、環境汚染物質の検出および新規化学物質のリスク評価に有用であると考えられる。
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