2005 Fiscal Year Annual Research Report
動的速度論的分割を伴なうアンチ選択的不斉水素化反応の開発
Project/Area Number |
17790006
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
牧野 一石 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (20302573)
|
Keywords | 触媒的不斉反応 / 動的速度論分割 / イリジウム / ルテニウム / β-ヒドロキシ-α-アミノ酸 / 異常アミノ酸 / BINAP / 不斉水素化反応 |
Research Abstract |
動的速度論分割を伴う触媒的不斉反応は,ラセミ体の原料から光学活性化合物を得るための最も理想的な方法論のひとつである。β-ヒドロキシ-α-アミノ酸類はパプアミドやポリオキシペプチン,バンコマイシンといった非常に興味深い生物活性をもつペプチド性天然有機化合物に含まれる構造異常アミノ酸のひとつであり,これらの一般性の高い合成法を確立することは,有機合成化学のみならず医薬化学的にも極めて重要なことである。 私はすでにα-アミノ-β-ケトエステルのRu-BINAP錯体を用いた動的速度論分割を伴うアンチ選択的不斉水素化反応によるβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸類の合成法を報告している。これは従来知られている野依らにより開発された不斉水素化反応がアミノ基と水酸基がシン配置のものを与えることに対して,私の方法論は2位アミノ基を保護することなく塩酸塩とすることでアンチ型のものを高い光学純度で与える。本反応ではC4位が脂肪族のものに対しては極めて高いアンチ選択性とエナンチオ選択性を示し,様々な反応基質に適用することが可能であるが,一方でC4位に芳香環を有するものに対してはエナンチオ選択性が全く得られないということが問題となっていた。今回私はこの問題を解決するためにイリジウム錯体を用いた初めての動的速度論分割を伴う不斉水素化反応の有用性を見出した。すなわち[IrCl(cod)]_2-MeOBIPHEP-NaIからなる錯体を,水素100気圧下α-アミノ-β-ケトエステルの塩酸塩に作用させると,動的速度論分割を伴うアンチ選択的な触媒的不斉水素化反応が進行することを見出した。本反応はRu錯体とは対照的に,C4位が芳香環をもつものに対して優れた立体選択性を示すことが明らかにすることができた。
|