2005 Fiscal Year Annual Research Report
酸素分子を利用した生体高分子複合体の相互作用界面を決定する新規NMR解析法の開発
Project/Area Number |
17790031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂倉 正義 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (20334336)
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 蛋白質 / 相互作用解析 / 常磁性効果 / コンタクトシフト |
Research Abstract |
【目的】コンタクトシフトは、酸素分子と核スピンの衝突に伴い、核スピンの周囲の電子と酸素分子の不対電子の重なりが生じ、これにより核スピンの核磁気共鳴周波数が変化(シフト)する現象である。コンタクトシフトは、特に^<13>C核において、顕著に観測されることが明らかにされている。本研究では、溶媒中の酸素分子が蛋白質表面に存在する^<13>C核に対して誘起するコンタクトシフトを利用し、複合体形成に伴う蛋白質の表面の変化を、コンタクトシフトの変化として検出する、新規蛋白質間相互作用界面同定法の開発を試みた。 【結果】40気圧の酸素加圧下および同圧の窒素加圧下において、ユビキチン(ubi)の^<13>C NMRスペクトルを測定し、両者の差から酸素によるコンタクトシフトを得た。得られたコンタクトシフトを、各原子の溶媒露出度と比較した結果、ubi表面に存在する脂溶性のくぼみを除いて、両者の相関が観測された。脂溶性のくぼみに存在する原子に関しては、溶媒露出度から予想されるよりも大きなコンタクトシフトが観測され、酸素分子が蛋白質表面の脂溶性のくぼみに対して親和性を示すことが示唆された。次に、ubi-ユビキチン加水分解酵素(YUH)複合体について、コンタクトシフトを測定し、ubiについて得られた結果と比較した。この結果、相互作用界面に存在する原子の一部(T7,L71等)において、複合体形成に伴うコンタクトシフトの減少が観測された。しかし、相互作用界面に存在するL8、分子内部に存在するI13等においては、複合体形成に伴うコンタクトシフトの上昇が観測された。 【考察】これまでの解析結果において、コンタクトシフトの変化と、溶媒露出度の変化が一致していない。この理由として、蛋白質内部および相互作用界面の脂溶性領域に対する酸素分子の親和性の影響が考えられる。次年度は、この影響を排除する方法について検討を行う。
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Research Products
(2 results)