2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17790032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 恵 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (80302610)
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Keywords | チャコウラナメクジ / 連合学習 / 嗅覚 / 局所場電位 / 一酸化窒素 / グアニル酸シクラーゼ / 同期振動 / 前脳 |
Research Abstract |
軟体動物であるチャコウラナメクジの嗅覚中枢である前脳で局所場電位の規則的な振動がみられる.電位振動は匂いの情報処理の正確さや記憶に関わっていると考えられている.触角の嗅上皮に匂い刺激を与えると,電位振動の振動数が一過的に変化することが知られているが,電位振動の修飾には何らかの神経修飾メカニズムが働いていると考えられるため,そのメカニズムを薬理学的手法によって解明することを試みた.脳-触角標本を作製し,前脳の表面からガラス電極を用いて局所場電位を測定し,触角に匂い物質を与えて反応を測定した.匂い物質としてオクタノールなどのアルコールを与えると,一過的に局所場電位の振動数が上昇した.次に神経修飾物質として知られる一酸化窒素の阻害薬を前脳に局所投与してから匂い刺激を行った。その結果,一酸化窒素合成阻害薬であるL-NAMEと,グアニル酸シクラーゼの阻害薬であるODQはいずれも電位振動の振動数の増加を抑制した.次に学習による電位振動の応答の変化について,匂いを条件刺激,苦味物質(キニジン)を無条件刺激に用いる嗅覚嫌悪学習を用いて調べた.条件付けの1日後に脳-触角標本を作製して匂い刺激の効果を測定すると,条件付けを行った個体では,小触角に匂いを与えたときに,振動数の上昇が抑制されることがわかった.これには,一酸化窒素による神経修飾効果の抑制が関わっている可能性が示唆された.これらの結果から,前脳においては学習依存的に局所場電位振動の振動数変化が生じ,これは一酸化窒素-グアニル酸シクラーゼの経路によって担われていることが示唆された.
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