2005 Fiscal Year Annual Research Report
分泌型セリンプロテアーゼによるドパミン遊離調節機構の解明
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17790056
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
永井 拓 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (10377426)
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Keywords | プロテアーゼ / ドパミン / 神経化学 / 組織プラスミノーゲン活性化因子 / プラスミン |
Research Abstract |
統合失調症は、生涯有病率約1%という極めて発症頻度の高い精神病である。幻覚、妄想、思考障害、精神運動興奮などの症状が発現する。一方、注意欠損/多動性障害は、年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、衝動性および多動性を特徴とする行動障害を呈する疾患である。これら疾患は学童期から青年期に発病し、社会活動や就学に支障をきたすことから大きな社会的な問題となっている。臨床においてドパミン作動性神経に作用する薬剤が上記2つの疾患の症状を軽減することから、その発現にはドパミン作動性神経系が関与していることが示唆されている。しかし、詳細な発現機序については不明であり、新たな治療薬の開発が望まれている。我々は、分泌型セリンプロテアーゼである組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)およびプラスミンが脳内においてモルヒネ誘発性ドパミンの遊離を促進することを見出した(Nagai et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101,3650-3655,2004)。本研究では、in vivo dialysis法を用いて高カリウム刺激により誘発される側坐核のドパミン遊離に対するtPA/プラスミン系シグナルの作用について調べた。tPA/プラスミン系シグナルを抑制するPAI-1は高カリウムにより誘発されるドパミン遊離を減少し、逆にtPA/プラスミン系シグナルを促進するtPAおよびプラスミンは高カリウム刺激により誘発されるドパミン遊離を増強した。さらに、tPA-KOマウスにおいて高カリウム誘発性ドパミン遊離は野生型マウスに比較して著明に障害されていた。高カリウム刺激の前に側坐核にtPAを補充したところ、ドパミン遊離の障害はほぼ完全に回復した。以上の結果より、tPA/プラスミン系シグナルはドパミン遊離を制御しており、プラスミンはドパミン遊離に対して促進的に作用していることが示唆された。我々は、tPAが結合する受容体として知られているprotease-activated receptor-1(PAR-1)に着目しており、PAR-1がドパミン作動性神経に分布していることを確認している。現在、tPA/プラスミンを介したドパミン遊離調節機構にPAR-1が関与しているかどうか動物レベルで検討している。
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Research Products
(6 results)