2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患による小胞体ストレスに関与する新規因子の同定と創薬への試み
Project/Area Number |
17790064
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
細井 徹 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (40379889)
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Keywords | 小胞体ストレス / Akt / CHOP / 神経変性疾患 / II型糖尿病 / PI3K |
Research Abstract |
近年,神経変性疾患やII型糖尿病等の病態の形成に小胞体ストレスが関与していることが明らかにされ注目を浴びている.小胞体はタンパク質の品質管理において重要な役割を果たしているオルガネラであり,この機能が障害されると小胞体内に不良品タンパク質が蓄積して小胞体ストレス状態に陥る.この状態に対して細胞は様々なストレス応答を起こすことが知られている.一方,AktはPI3Kの下流に存在するSer/Thr kinaseであり,細胞の生存において重要な役割を担っていると考えられている.通常,Aktは細胞質に存在するが,insulin等の細胞外因子により活性化されたPI3KによりPIP_3が産生されると、Aktが活性化されることが知られている.PI3K-Akt経路が生存シグナルとして機能することが知られる一方,小胞体ストレスによる細胞死との関係については不明な点が多く残されている.そこで本研究では,小胞体ストレス状態時におけるPI3K-Akt経路の役割について検討した. その結果、小胞体ストレス初期においては、Aktは活性化されるが、ストレスが長時間に渡ると、むしろ不活性化された.さらに、小胞体ストレスによるAktの活性化においてはPI3Kを介していることが示唆された.一方、PI3Kの阻害によって、小胞体関連転写因子でありアポトーシスに関与しているCHOPの誘導が認められ、細胞死が観察された. 以上の結果から、小胞体ストレス負荷の初期において,細胞は一時的にAkt活性を上昇させて生存の方向へ働きかけるが,ストレス状態が長期に渡ると,Aktを不活性化させることでCHOPを誘導し,細胞死を選択していると考えられた.小胞体ストレス状態において,PI3K-Akt経路は細胞の生死を決定付けるセンサー的な機能を発揮していることが推測された.
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