2005 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス誘発性小胞分泌機構の解明-HIVウイルス蛋白質TAT遊離の分子基盤
Project/Area Number |
17790066
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤田 亮介 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (70380855)
|
Keywords | 非小胞性遊離機構 / FGF-1 / TAT / S100A13 / カルシウムイオン / FRET / シナプトタグミン / アストロサイト |
Research Abstract |
本研究はストレス誘発性の非小胞分泌機構の解明を目的として、AIDS脳症の原因として考えられているTransactivating regulatory protein (TAT)の遊離機構を中心に解明していく。TATや神経栄養因子であるFGF-1、あるいはこれまでの所属研究室において見出された神経保護蛋白質NDIは熱や飢餓ストレスによって細胞内の大部分の蛋白質が細胞外に遊離されるが、そのアミノ酸配列内にシグナル配列を有しておらず、小胞遊離機構以外で細胞外へ遊離されている事が明らかになった。遊離機構の解明にはTAT蛋白質発現ベクターの作成が不可欠であるが、P3区域での作業を伴う事から、本年度はまずFGFを用いた検討から、ストレス誘発性非小胞遊離機構の解明を行った。その結果、FGF-1は飢餓ストレスにより、Ca^<2+>結合タンパク質S100A13と結合した状態で遊離される事をストレス負荷後の細胞外培養上清のプロテオミクス解析から見出した。また、FGF-1とS100A13の相互作用はCa^<2+>濃度依存性であり,S100A13のC末端領域がこの結合に必須であった。FGF-1との相互作用欠失変異体をアストロサイト細胞株に過剰発現させるとストレス誘発性のFGF-1の遊離が抑制された。また、ストレス誘発性のFGF-1とS100A13の遊離は、細胞内、細胞外Ca^<2+>キレート剤により抑制され、電位開口性N型Ca^<2+>チャネル阻害剤であるω-conotoxin GVIAでも遊離は抑制された。更に、飢餓ストレスによって不連続な振幅をもつ細胞内Ca^<2+>濃度上昇が観察され、このCa^<2+>濃度上昇は、N型Ca^<2+>チャネル開口を介した小胞体からのCa^<2+>誘発性Ca^<2+>遊離が関与することが明らかになった。そこで、細胞内におけるFGF-1とS100A13の相互作用をFRET解析により検討したところ、その相互作用はin vitro再構成系と同様にN型Ca^<2+>チャネル開口依存的であった。また、NDIにおける検討では、NDIとS100A13の複合体にはシナプトタグミンの部分ペプチド(p40 syt1)が、プロテオミクス解析によって明らかになった。この様に、非小胞性遊離に関連する分子群が明らかになってきた事から、今後、TAT蛋白質との相互作用をin vitro再構成系における検討並びに細胞内での検討によって進めていく。
|