2005 Fiscal Year Annual Research Report
新たに見い出した2型ミクログリアに特徴的な神経保護作用の分子基盤の解明と応用
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17790067
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川原 浩一 熊本大学, 大学院医学薬学研究部, 助手 (10347015)
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Keywords | ミクログリア / サブタイプ / アルツハイマー病 / 抗炎症性サイトカイン / 酸化ストレス / 特異的抗体 / 脳虚血 / 神経細胞 |
Research Abstract |
我々は、「ミクログリア(MG)が示す神経保護作用では2型MGとよぶサブタイプが大きく寄与している」ことを、基礎的・応用的視点からより明確に示すべく研究を進めている。先に、我々はin vitroにおいて抗炎症性サイトカインIL-4で処理した神経保護性MG(type-2 MG)には、神経毒性が高いオリゴマー状Aβ(o-Aβ)選択的な新しいクリアランス機構が誘導されることを見い出した。本年度は、(1)type-1 MGとtype-2 MGの海馬神経細胞に対する応答の違いを、共培養系を用いて調べた。(2)上述の興味深いクリアランス機構がin vivoにおいても機能するかを調べるため、ADモデルマウスであるAPP23マウスを用い、抗炎症性サイトカインIL-4/IL-13混合液の脳内微量注入を行い、モリス水迷路(MWM)によるマウスの記憶学習能力への影響、および脳切片の免疫組織染色によるAβ蓄積量の変化を解析した。その結果、以下の知見が得られた。 (1)o-Aβの神経細胞毒性はtype-2 MGとの共培養によって保護されるが、type-1 MGではこの効果が認められなかった。また、同じ共培養系を用いてLPS刺激を加えたとき、type-1 MGでは神経細胞死を引き起こしたのに対し、type-2 MGは神経細胞死が認められなかった。これらの結果からもtype-1 MGは神経傷害性、type-2 MGは神経保護的であることが示された。 (2)APP23マウス(6ヶ月齢雌)の脳内にIL-4/IL-13を微量投与し、MWM試験を行うと、saline投与群に比較して行動の改善傾向が見られた。行動の改善が見られたAPP23マウスでAβの蓄積量を調べたところ、投与側では反対側に比べてAβが低下していることがわかった。 本研究はIL-4/IL-13によるAβクリアランス機構がin vivoでも働きうる可能性を示唆するもので、今後より適切なADモデル系(月齢数、薬液濃度)や注入部位を詳しく検討するための第一歩である。
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