2006 Fiscal Year Annual Research Report
網膜における血管内皮細胞間ギャップの視覚化と血管透過性に対する薬物評価系への応用
Project/Area Number |
17790070
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中原 努 北里大学, 薬学部, 講師 (10296519)
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Keywords | 血管透過性 / 網膜血管 / homocysteine / ギャップジャンクション |
Research Abstract |
目的:本研究の目的は、網膜血管内皮細胞間に形成されるギャップの視覚化ならびにその定量的解析を血管透過性亢進に対する薬物治療の評価系として確立することである。本年度は、コレステロールと同様に心・血管障害のリスクファクターになり得るhomocysteineが網膜血管の透過性を亢進させるという大変興味深い知見を得た。そこで、homocysteineの網膜血管に対する作用に焦点を絞り研究を進めた。方法:麻酔マウスの静脈内にFITC-albumin(100mg/kg)を投与し、15分後にhomocysteine(0.3または1mg/kg, i.v.)を投与した。その45分後にマウスを灌流固定し、眼球を摘出した。網膜を内皮細胞マーカーで蛍光免疫染色した後、FITC-albuminの網膜内分布と網膜血管の走行を蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。結果: Homocysteine投与後、網膜内に複数のFITC-albumin漏出部が観察された。FITC-albuminの漏出は、網膜の中心部と末梢部で特に差がなく生じた。Homocysteineは用量依存的にFITC-albuminの漏出部位数を増加させた。一方、漏出面積は用量間で差がなかった。また共焦点レーザー顕微鏡を用いた詳細な観察によりFITC-albuminは網膜の内網状層に分布する毛細血管から漏出し、漏出したFITC-albuminは内網状層から内穎粒層を経て外網状層にも広がることが示された。考察:これらの結果は、血管内皮細胞間ギャップは毛細血管で形成されやすく、形成される血管内皮細胞間ギャップのサイズはほぼ同じであり、homocysteineは、血管内皮細胞間ギャップ形成部位を増加させることにより血管透過性を亢進させることを示唆している。また、漏出した血漿成分が内顆粒層の神経細胞に直接接触し影響を及ぼす可能性も示唆された。今後は、homocysteineが形成するギャップのサイズと数の定量的解析、ギャップ形成機序およびhomocysteineと病態との関連性について研究を進めたい。
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