2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜における脂質配向性を制御するフリップ・フロップの分子機構の解析
Project/Area Number |
17790082
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長谷川 顕子 (山路 顕子) 独立行政法人理化学研究所, 辻本細胞生化学研究室, 研究員 (20332314)
|
Keywords | ホスファチジルセリン / 形質膜 / 脂質配向性 / 変異株 / 脂質輸送 / フリップ・フロップ / 細胞毒性 / リン脂質 |
Research Abstract |
生体膜における脂質分布は不均一であり、例えば形質膜ではホスファチジルセリン(PS)などのアミノリン脂質は脂質二重層の内葉に偏って局在していることが知られている。このような生体膜の非対称性は、フリップ・フロップと呼ばれる脂質が二重膜を横切って移動する機構により維持されていると予想されるが、その分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、細胞外からの過剰なPS添加が細胞毒性を持つことに着目し、PS耐性変異株を解析することによりフリップ・フロップの解明を目指す。本年度はまずPS耐性株の生化学的な性状解析を行った。PS耐性株は細胞外PSに対する感受性が親株の約2倍低下していた。耐性株におけるリン脂質組成やPS生合成活性には異常は認められなかった。次に蛍光標識した脂質アナログを細胞の形質膜外層に取り込ませて、その後の動態観察を行った。親株では蛍光標識PSは速やかに細胞内に移行したのに対し、PS耐性株では37℃にて30分間インキュベーションしても形質膜外層に留まったままだった。また蛍光標識ホスファチジルコリンは、親株ではほとんどが外層に留まったのに対し、PS耐性株では幾分かが細胞内に移行した。これらの結果から、PS耐性株ではフリップ・フロップに関わる何らかの因子に異常があるものと予測された。その因子の同定と詳細な機構解析が来年度の課題である。また現在のところ、PSによる細胞死のメカニズムは全く不明であるため、それについても解析を行った。その結果、培地血清中に含まれる補体がリポソームに作用して膜構造を壊すことにより、リポソーム中のPSの細胞への取り込み効率が上がり、細胞死を起こし易くなることがわかった。さらに様々な阻害剤や活性促進剤などを用いて、PSによる細胞死がアポトーシスか否か、どのような情報伝達系に依存しているかを検討中である。
|
Research Products
(3 results)