2006 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍新生血管傷害療法を応用した膵がんに対する新規アプローチ
Project/Area Number |
17790128
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00381731)
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Keywords | 腫瘍新生血管傷害療法 / 膵がん治療 / 同所移植モデル / 標的化リポソーム / 抗がん剤 / ペプチド |
Research Abstract |
有効ながん科学療法が確立されていない膵がんに対し、これまでにないアプローチとして腫瘍新生血管傷害療法の応用に関する基礎研究を実地した。腫瘍新生血管傷害療法とは、血管新生阻害剤ではなう抗がん剤によって増殖性内皮細胞を殺傷し、がんの治癒を目指す治療法のことである。本研究では、腫瘍新生血管傷害療法の有効性を検討するに先立ち、ヒト膵がんの特性を反映する膵がん同所移植モデル動物を作成した。同所移植したがんを病理組織学的に解析し、ヒト膵がんと共通点が多い乏血管性のがんであることを明らかにした。次に腫瘍新生血管特異的ペプチド(Ala-Pro-Arg-Pro-Gly ; APRPG)をPEG鎖の先端に提示し、ドキソルビシンを包含した粒子径約150nmの腫瘍新生血管標的化リポソームを調整した。この標的化リポソームを膵がん同所移植モデルに静脈内投与し腫瘍内分布を検討した結果、一般的な長期血中滞留型リポソームが投与後時間の経過に伴って新生血管近傍に漏出したのに対し、標的化リポソームは新生血管の内皮細胞に局在した。同所移植モデルにおいて抗がん実験を実施したところ、標的化リポソーム投与群では対照群と比較して有意に高いがん治療効果が得られた。治療後のがんの凍結切片を作製し、治療効果の作用機序を免疫組織染色によって解析した結果、標的化リポソーム投与群において腫瘍内の血管密度が著しく低下していた。さらにTUNEL染色によってアポトーシス細胞を可視化したところ、標的化リポソーム投与によって血管内皮細胞および周囲のがんにアポトーシスが観察された。以上の結果より、難治がんとして知られ、従来型DDSでは薬剤の送達が困難な乏血管性の膵がんに対し、標的化リポソームを用いた腫瘍新生血管傷害療法の有効性が示唆された。
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