2005 Fiscal Year Annual Research Report
アポトーシス性細胞縮小過程における調節性細胞容積増大の抑制機構の生理学的解析
Project/Area Number |
17790155
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
高橋 信之 生理学研究所, 細胞器官研究系, 助手 (50370135)
|
Keywords | アポトーシス / 細胞容積 / RVI / Akt / ASK |
Research Abstract |
「細胞外高浸透圧刺激がどのようにしてRVIが起こるのか」、「RVIがどのようにしてアポトーシス刺激により抑制されるのか」を明らかにする目的で以下のような実験を行った。 ヒト上皮HeLa細胞の高浸透圧条件下におけるRVIは、JNK阻害剤、p38MAPK阻害剤、MEK阻害剤では影響を受けなかったが、PI3K阻害剤であるwortomanninで有意に抑制された。PI3Kの下流に位置するAkt阻害剤でもRVIが抑制された。Aktのドミナントネガティブ型として働くAktのN末端PHドメインを過剰発現させたところ、同様にRVIが抑制され、高浸透圧条件下にもかかわらず細胞容積は減少したままとなった。またAktは細胞外高浸透圧条件(450mOsm)によりリン酸化(活性化)されていた。したがって、この高浸透圧刺激によるAktの活性化は、正常状態におけるRVIの誘導に重要であることが示唆された。この高浸透圧刺激によるAkt活性化は、スタウロスポリンおよび過酸化水素によるアポトーシス刺激で抑制され、これらアポトーシス刺激は、高浸透圧条件下におけるRVIも抑制した。しかしこのアポトーシス刺激によるRVI抑制は、ROSスカベンジャー添加で解除されたため、アポトーシス誘導時の細胞内ROS産生がRVI抑制に重要であると考えられた。そこで、ROSにより活性化されるapoptosis signaling kinase-1(ASK1)の関与を検討するために、ASK1のキナーゼ活性を消失させた変異型ASK1を過剰発現させたところ、アポトーシス刺激によるAkt活性化抑制やRVI抑制が解除された。したがって、ASK1はアポトーシス刺激によりリン酸化を受けて活性化されていることが結論された。 以上の結果から、HeLa細胞のRVIは高浸透圧刺激によるPI3K/Aktシグナル経路の活性化によってもたらされ、アポトーシス刺激によって産生された細胞内ROSによるASKの活性化が、PI3K/Aktシグナル経路を抑制することでRVIが抑制されるというメカニズムが考えられた。
|