2005 Fiscal Year Annual Research Report
トロホブラスト分化におけるPLCδ1,δ3の機能解析
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17790198
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
中村 由和 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (60366416)
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Keywords | イノシトール リン脂質代謝 |
Research Abstract |
Phospholipase C(PLC)はイノシトールリン脂質代謝系においてセカンドメッセンジャー産生のトリガーとなる酵素である。δ型のPLCは進化上最も古くより保存されているPLCであり、生命現象において基礎的、不可欠な機能を持つ考えられていたが、哺乳動物における生理機能は解明されていなかった。これまでに私達はPLCδ1ノックアウトマウス(KOマウス)の作製、解析によりPLCδ1が表皮幹細胞の分化調節に関与することを報告してきた。PLCδ1が上皮系組織、細胞株に多く発現していることから、PLCδ1KOマウスの皮膚以外の上皮系組織においても異常が発生していることが予測された。しかしながら、PLCδ1KOマウスにおいて皮膚以外の上皮系組織では明確な異常が見られず、他の上皮系組織においては他のPLCにより機能相補が成されていることが示唆された。そこでPLCδ1に最も類似したPLCであるPLCδ3とのダブルKOマウスを作製し、機能相補の有無を調べたところ、PLCδ1/δ3ダブルKOマウスは胎生11.5日から13.5日の間で致死となることが明らかになった。胎生致死の原因を詳細に解析したところ、PLCδ1/δ3ダブルKOマウスの胎盤ではトロホブラストの増殖低下および細胞死の増加を伴った顕著な血管減少が観察された。また、四倍体キメラ法により胎児自体でのみ特異的に、PLCδ1/δ3を欠損させたマウスを作製したところ、これらのマウスは胎生11.5日から13.5日における致死を回避することも明らかになった。以上の結果より、PLCδ1/δ3ダブルKOマウスでは胎盤トロホブラストの異常により正常な胎盤の構造を維持することができなくなり、母体-胎児間の栄養交換不良に陥っており、この事が胎生致死の原因であることが強く示唆された。
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