2005 Fiscal Year Annual Research Report
エキノコックスの発生・増殖制御における14-3-3タンパクの機能解析
Project/Area Number |
17790274
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 淳 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 学術研究員 (70296169)
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Keywords | 人獣共通感染症 / 寄生虫症 / エキノコックス症 / 14-3-3タンパク / 発生 / 増殖 / 多包虫 |
Research Abstract |
エキノコックス症では、幼虫期エキノコックス(多包虫)の発生・増殖が寄生臓器の機能不全など深刻な病害を引き起こす。本研究では、多包虫が産生する2種類のタンパク14-3-3およびII/3-10の遺伝子発現レベルと虫体の増殖活性との関連を調べた。まず、多包虫をヌードマウスおよび野生型対照マウス(BALB/c系)に接種し、その後の虫体発育を観察した。感染後1か月では、ヌードマウスと対照マウスのいずれにおいても、虫体発育は緩慢であった。感染後2か月には、ヌードマウスでのみ著しい虫体増殖を認めた。この感染後2か月目のヌードマウス由来虫体では、胚細胞層の増殖が顕著であり、さらにこの細胞層から分化・派生した繁殖胞および原頭節の形成が観察された。次に、標的とする虫体由来タンパクの遺伝子発現レベルを、リアルタイムPCR法により定量的に測定した。感染後1か月では、両マウス由来虫体との間で、14-3-3遺伝子発現には差がみられなかった。感染後2か月では、ヌードマウス由来虫体における14-3-3発現が顕著に上昇したのに対して、対照マウス由来虫体では、感染後1か月の発現レベルにとどまった。一方、II/3-10遺伝子発現については、感染後1か月の虫体では、ヌードマウス由来虫体と対照マウス由来虫体との間で、大きな差がみられなかった。感染後2か月では、ヌードマウス由来虫体におけるII/3-10発現は感染後1か月とほぼ同レベルであったが、対照マウス由来虫体では、II/3-10の発現レベルが低下していた。多包虫体内における14-3-3の局在を、免疫組織化学法により調べだ結果、同タンパクは虫体の胚細胞層に発現がみられた。以上の成績から、多包虫が産生する14-3-3およびII/3-10は、虫体の増殖活性に関連して異なる発現パターンを示すことが明らかとなった。特に、14-3-3は、虫体の胚細胞の増殖に関与することが示唆された。
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Research Products
(2 results)