2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌CagA蛋白に起因する胃癌発症分子機構の解明
Project/Area Number |
17790283
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
紙谷 尚子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助手 (40279352)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / cagA遺伝子 / 胃癌 |
Research Abstract |
本研究は、リン酸化依存的・非依存的なCagAの生物活性を比較解析し、CagAによる胃癌発症の分子機構を解明することを目的とする。 平成17年度の研究実績として、ヒト胃上皮細胞由来のMKN28細胞を用いてTet-Offシステムで野生型CagAならびにリン酸化耐性CagAを誘導発現させる安定発現株を樹立した。尚、CagA分子中のリン酸化部位であるEPIYA配列中のチロシン残基をアラニン残基に置換した変異型CagAをリン酸化耐性CagAとした。まず、安定発現株の細胞形態を観察したところ、CagA発現により著しい形態変化が生じることが明らかになった。特に、野生型CagA発現細胞においてはhummingbird表現型に酷似した形態変化も観察された。次に、樹立した安定発現株を用いて、細胞増殖能に対するCagAの生物活性を解析した。Br-dU取り込み実験、MTTアッセイ及びフローサイトメーター(FACS)による細胞周期解析を検討し、いずれの解析からもCagAが細胞増職能を抑制することを明らかにした。次に、CagAが細胞周期・細胞増殖に関連する分子の発現に及ぼす影響を調べた。CagA誘導及び非誘導細胞における細胞内蛋白発現をウェスタンブロットにて解析したところ、CagA誘導細胞では細胞周期のアクセル分子であるcyclin D1及びcyclin Eの発現量が増加していることが明らかになった。しかしながら、その一方で、細胞周期のブレーキ分子であるp21が著しい増加とともに、低リン酸化型pRbの増加、E2F1及びc-Mycの減少がみられた。リン酸化耐性CagA誘導細胞においても同様にcyclin D1及びp21の変化が観察されたことから、CagAのリン酸化非依存的な生物活性によることが明らかになった。現在、CagAによるcyclin D1及びp21誘導の分子機構の解明を目指して研究を進めている。
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