2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌CagA蛋白に起因する胃癌発症分子機構の解明
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17790283
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
紙谷 尚子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助手 (40279352)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / cagA遺伝子 / 胃癌 / β-cateninシグナル |
Research Abstract |
ピロリ菌体内で産生されたCagA蛋白はIV型分泌機構1を介して胃上皮細胞内に注入された後、細胞内のSrcファミリーチロシンキナーゼによりリン酸化される。これまでに、CagAは自身のリン酸化の有無により異なった細胞内標的分子に結合することが報告されている。本研究は、リン酸化依存的・非依存的なCagAの生物活性を比較解析し、CagAによる胃癌発症の分子機構を解明することを目的とする。 平成17年度の研究実績として、ヒト胃上皮細胞由来のMKN28細胞においてCagAがリン酸化非依存的にcyclin D1を誘導する一方でp21^<WAF1/Cip1>を誘導することを明らかにした。平成18年度においては、CagAによるcyclin D1誘導の分子機構の解明を目指して研究を進め、以下の研究実績をあげた。 ヒト胃上皮細胞由来のMKN28細胞及びMKN45細胞にCagAを異所性発現させ、種々のレポーターベクターを用いてルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、CagAがリン酸化非依存的にβ-cateninシグナルを活性化することを明らかにした。興味深いことに、cyclin D1はβ-cateninシグナルの代表的な標的遺伝子である。そこで、CagAがβ-cateninシグナル活性化を介してcyclin D1を誘導するという仮説を立てた。cyclin D1 promoterの下流にルシフェラーゼ遺伝子を導入したレポーターベクターを用いてルシフェラーゼアッセイを行ったところ、CagAによるcyclin D1 promoterの活性化はadenomatous polyposis coli(APC)の共発現により阻害されることが明らかになった。従って、CagAはリン酸化非依存的にβ-cateninシグナルを活1生化し、その標的遺伝子の一つであるcyclin D1を転写活性化することを明らかにした。
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Research Products
(1 results)