2005 Fiscal Year Annual Research Report
Quorum Sensingによるサルモネラ病原性発現機構の解明
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17790291
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
羽田 健 北里大学, 薬学部, 助手 (00348591)
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Keywords | サルモネラ / 病原性 / Quorum Sensing |
Research Abstract |
Salmonella enterica(サルモネラ)の病原性発現におけるQuorum sensing(QS)の役割を明らかにするため、S.enterica serovar Typhimurium(ネズミチフス菌)の2つのQS(QS-1および-2)の機能発現に必須な遺伝子sdiAおよびluxSの破壊株(ΔsdiA株およびΔluxS株)をred recombinaseシステムを用いて作成した。サルモネラはpathogenicity island(SPI-1および-2)にコードされる異なるタイプ3型分泌機構(T3SS)を発現し、SPI-1 T3SSは上皮細胞侵入性に、またSPI-2は細胞内増殖性に重要な役割を果たす。これまでにいくつかの病原細菌においてQSがタイプ3型分泌機構(T3SS)の発現に関与することが報告されていることから、まずサルモネラにおいてQSがT3SSの機能発現に関与するか否かを明らかにすることを試みた。各QS破壊株についてSPI-1およびSPI-2 T3SSの転写調節遺伝子hilAおよびssrAの下流にlacZを挿入した変異株を作成し、レポーターアッセイによりこれら遺伝子の転写活性を測定した。その結果、各QS破壊株共にhilAおよびssrAの転写活性は野生株と同程度であった。また、QS破壊株の分泌たん白質をウェスタンブロッティングにより検出したが、SPI-1のエフェクターたん白質SipBおよびSipC、さらにSPI-2のエフェクターたん白質SseBの発現量に野生株との変化は見られなかった。これらのことから、SPI-1およびSPI-2の機能発現にQSは関与しないことが明らかとなった。次に、QS破壊株について各種病原性試験を行った。その結果、ΔsdiA株において、ヒト子宮頸癌由来上皮細胞HeLaへの侵入率が野生株に比べて低下した。このことからQS-1がサルモネラの感染初期の病原性発現に関わることが示唆された。サルモネラにおいて、宿主細胞への付着に関わる線毛遺伝子の欠失により細胞侵入性が低下することが知られている。このことから、QS-1がサルモネラの線毛発現に関与することが予想される。ネズミチフス菌ではゲノム解析により13個の線毛合成遺伝子群が同定されているが、その発現調節機構は明らかにされていない。現在、ネズミチフス菌野生株およびΔsdiA株について、13個の線毛合成遺伝子群の転写発現をリアルタイムPCRにより定量的に比較している。
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