2005 Fiscal Year Annual Research Report
チフス菌・パラチフスA菌病原因子とマクロファージ内増殖機構の解析
Project/Area Number |
17790298
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
廣瀬 健二 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (70311397)
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Keywords | サルモネラ / マクロファージ / 細胞内増殖 |
Research Abstract |
腸チフスと症状が類似した疾患であるパラチフスはパラチフスA菌によって引き起こされる。通常、パラチフスは腸チフスより軽症である。チフス菌、パラチフスA菌はともにサルモネラ属の菌であるが、チフス菌はVi抗原を持ち0抗原は09を持つ。パラチフスA菌はVi抗原などのきょう膜抗原はもたず0抗原は02をもち、同じサルモネラ属ではあるが、細菌学的にはチフス菌とは異る菌である。現在まで私たちの研究によると、Vi抗原はチフス菌の病原因子でありチフス菌の細胞内増殖に必須であり、Vi抗原のないチフス菌では細胞内増殖ができないため病原性低下していることを報告した。また、Vi抗原のないチフス菌は、一般的に病原性がないと考えられている。ところが最近、疫学情報によると、いままではパラチフスの方が腸チフスより軽症であったが、最近では逆にパラチフスのほうが腸チフスより治りにくく病態の経過が長引く傾向があることがわかった。このようにVi抗原をもたないパラチフスA菌がチフス菌と同程度の敗血症をおこすことから、細胞内寄生菌であるチフス菌、パラチフスA菌には、Vi抗原以外の両者に共通した細胞内増殖機構があると考えられる。おそらくこれらのメカニズムはチフス菌・パラチフスA菌以外のチフス性サルモネラに共通のメカニズムでもあると予想されるため、このメカニズムを解明することは、チフス性サルモネラ症の病原因子の解明に大きな貢献ができると考えている。まず初めに、チフス菌・パラチフスA薗のマクロファージ内増殖を比較した。ともに、細胞内で増殖する速度や取り込まれる量に大きな差はみられなかった。さらに、細胞内寄生性細菌は食細胞、特にマクロファージに貪食されることによって免疫応答の第1段階が始まるため、貪食された後に、貪食したマクロファージから分泌されるサイトカイン(TNF-alpha, IL-12,IL-6,IL-1,)遺伝子の発現をPCRで比較したが、両者の間で大きな差はみられなかった。これらより両者にはマクロファージ内での増殖・サイトカインの誘導性には大きな差がなくこれ以外のメカニズムが関することがわかった。
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