2005 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-1遺伝子発現のエピジェネティックな抑制機構
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17790303
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 助手 (80377192)
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Keywords | HTLV-1 / 潜伏 / クロマチンリモデリング / hBrm |
Research Abstract |
<背景・目的> 宿主染色体に組み込まれたHTLV-1 LTR活性は宿主側の転写制御機構に大きく依存している。中でもヌクレオソームの構造変換に関わる宿主機構の影響が考えられており、実際、レトロウイルス発現制御機構におけるクロマチンリモデリング因子の関与が明らかになりつつある。そこでクロマチンリモデリング因子がHTLV-1潜伏過程に関与するのか否かを明らかにするため、以下の解析を行った。 <結果> 1.クロマチンリモデリング因子hBrmの発現量の異なる一連のヒトT細胞株、Jurkat,HUT78およびMOLT4の染色体にHTLV-1 LTRを挿入後、その活性をeGFPをマーカー蛋白として解析したところ、hBrmの発現量が顕著なHUT78においてHTLV-1 LTR活性が顕著に抑制される傾向が認められた。次に、hBrmの発現が弱いMOLT4においてhBrmを一過性に発現させたところ、染色体中におけるHTLV-1 LTR活性の低下を誘導した。以上より、hBrmがHTLV-1活性の抑制に関与することが示唆された。 2.HTLV-1は40-50年の潜伏後、CD4陽性T細胞の白血病であるAdult T-cell leukemia(ATL)を誘発する。hBrmの発現は一部ヒトがん細胞株において欠損する傾向があるため、複数のATL,由来細胞株におけるhBrmの発現動態を解析したところ、調べたすべての細胞株においてhBrmが安定に発現していた。興味深いことに、HTLV-1のターゲットであるCD4陽性T細胞においてhBrmが強く発現していることが報告されており、ウイルス潜伏過程においてhBrmが有利に作用する可能性を示唆する。 3.さらに、ウイルス自身がコードする転写活性化因子Taxの存在下における制御機構を解析した。すると、hBrmによって引き起こされるHTLV-1 LTR抑制状態はTaxにより解除され、転写亢進を誘導することが明らかとなった。
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