2005 Fiscal Year Annual Research Report
PARP-1によるHIV-1のインテグレーションおよび遺伝子発現の制御機構の解析
Project/Area Number |
17790310
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
亀岡 正典 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教授 (60281838)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / HIV-1 / 遺伝子発現 / PARP / ポリADP-リボース |
Research Abstract |
PARP-1がHIV-1複製機構の複数の過程の制御機構に関わっていることが示唆されている。当研究課題では、HIV-1のインテグレーションおよび遺伝子発現機構におけるPARP-1の役割について、その分子機構を明らかとすることを目的とした解析を行った。 今年度、PARP-1欠損マウス細胞株と、PARP-1の遺伝子発現を特異的に抑制するsiRNAを導入したヒト細胞株を用いて、HIV-1のインテグレーション効率にPARP-1が影響をおよぼすかどうか解析した。方法として、染色体遺伝子に散在するAlu配列や、ヘテロクロマチン領域に局在するAlphoid配列の近傍へのHIV-1インテグレーションを定量的に検出できるリアルタイムPCR法を用いた。その結果、HIV-1がゲノム全体にランダムにインテグレーションする効率には、マウス細胞ではPARP-1が影響するのに対して、ヒト細胞ではPARP-1が影響しないこと、すなわちヒト細胞では、PARP-1が存在しなくとも効率良くランダムなインテグレーションが起こることがわかった。一方、HIV-1がヘテロクロマチン領域に部位特異的にイセテグレーションする効率は、マウス細胞とヒト細胞の両方で、PARP-1非存在下では著明に低下することがわかった。これらの解析結果は、HIV-1のヘテロクロマチン領域近傍への局所的なインテグレーションには、ヒトおよびマウス細胞の両方でPARP-1が必要であるが、ヒト細胞でのHIV-1のランダムなインテグレーションにはPARP-1が必ずしも必要でないことを示唆している。また、これと同時に、ヒト細胞とマウス細胞におけるHIV-1のランダムなインテグレーション反応には、異なる細胞性因子が関わっており、その制御機構にPARP-1が関与していることも示唆される。そこで、次に、HIV-1が細胞に侵入した後、ウイルスゲノムが核内に移行してインテグレーションする過程で形成されるpre-integration complex(PIC)の構成成分が、マウスとヒト細胞で異なるか否かを来年度以降解析する予定である。免疫沈降法を用いてPICを簡便かつ効率良く回収する系を確立するために、既存のHIV-1 PIC構成成分に対する単クローン抗体の作製も試みる予定である。
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