2005 Fiscal Year Annual Research Report
SARS発症動物モデルの開発とSARS-CoVの病原性発現機序に関する研究
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17790313
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
永田 典代 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (30270648)
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Keywords | SARS-CoV / 病原性発現機序 / 感染モデル動物 |
Research Abstract |
重症急性呼吸器症候群(SARS)発症モデルの作製とSARSコロナウイルス(SARS-CoV)の病原性発現機構を解明することを目的として、本年度はマウス、ラットでウイルスを継代しその性状と病原性の変化について検索した。具体的にはSARS患者からの分離株であるFrankfurt1株(以下F株、Ziebuhr博士より分与)をBALB/cマウスおよびF344ラットに経鼻接種し、接種後3日目の鼻腔あるいは肺洗浄液を用いて各動物に継代接種を行った。5代および10代継代後のウイルスを用いてウイルス学的および病理学的解析を行った結果、F株にはquasispicies (ORF7b領域の15アミノ酸の欠損の有無)が存在するが、10継代目までにマウスでは欠損型が、ラットでは非欠損型が選択増殖した。また、ウイルスSpikeタンパク領域内のレセプター結合領域の変異について調べるためにダイレクトシークエンスを行ったところ、ラットではレセプター結合領域内の1325番目の塩基の変異(A→C)とそれに伴うアミノ酸置換(チロシン→セリン)を認めた。一方、マウスでは10代継代株における塩基の変異が一ヶ所存在したがアミノ酸置換はなかった。これらの10代継代株をVeroE6細胞で一回継代後、感染実験を行った結果、マウス、ラットにおける感染、増殖能はともに増加し、病理学的に肺、鼻腔内でのウイルス抗原陽性細胞数の増加と検出期問の延長が認められた。また、増殖に伴う炎症反応は増強し、広範囲となり、特にラットの肺においては顕著でそれは細気管支から肺胞へ拡大した。マウス、ラットの継代の結果、感染・増殖性の上昇した変異ウイルスを得た。このウイルスを用いて来年度はSARS発症モデルの作製を試みる。
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