2006 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤耐性菌および耐性遺伝子の院内伝播形式とそれに相関する危険因子の統合的解明
Project/Area Number |
17790354
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高倉 俊二 京都大学, 医学研究科, 助手 (10378630)
|
Keywords | Enterobacter cloacae / 薬剤耐性 / インテグロン / 遺伝子型 / 院内伝播 / 突然変異頻度 / バイオフィルム形成能 |
Research Abstract |
平成17年度、院内で分離されたEnterobacter cloacae約60株の検討において、伝播性耐性遺伝子構造であるインテグロン関連遺伝子保有の有無、遺伝子クローン判別による院内水平伝播、および薬剤耐性との相関を検討した結果、インテグロンの獲得と抗菌薬多剤耐性および水平伝播の3者間の正の関連関係を明らかにし、インテクロン自体の獲得が院内伝播のレベルとして起こっていることの傍証をえた。 平成18年度においては、水平伝播と薬剤耐性に関連する菌側の因子として、緑膿菌等で報告のある(1)突然変異頻度の上昇株(mutator strain)の存在、(2)バイオフィルム形成能、を仮定し、同じ分離株において、突然変異頻度とバイオフィルム形成能を計測した。また、突然変異頻度と分離された患者の臨床因子の関連についても検討した。この結果、E.cloacaeの臨床分離株の約10%が有意な突然変異頻度の上昇を示すことが判明した。これは、大腸菌に関する報告(<5%)よりも明らかに高い率であった。また、多剤耐性と同一患者からの繰り返し検出が、突然変異頻度上昇と有意に相関していることが判明した。一方、突然変異頻度とバイオフィルム形成能、インテグロン関連遺伝子保有との間には挿管を認めなかった。これらの結果は、突然変異頻度の上昇が細菌の集団多様性の拡大を介して、多剤耐性化と定着の長期化をもたらすことを示唆すると考え、現在、これらを検証する実験計画を進めている。
|