2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトにおける終末糖化産物(AGEs)の脳・心血管病進展への影響
Project/Area Number |
17790394
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
榎本 美佳 久留米大学, 医学部, 助手 (10360281)
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Keywords | 終末糖化産物(AGEs) / 糖尿病 / 脳・心血管病 / 血栓マーカー / 一般住民検診 |
Research Abstract |
私どもは、世界7カ国共同研究の一環として昭和33年(1958年)より40年以上にわたり福岡県田主丸町において経年的に一般住民検診を行ってきた。また、平成14年より長崎県宇久町で一般住民検診を毎年行っており、平成16年度にAdvanced glycation end products (AGEs)を約200名に測定した。AGEs(終末糖化産物)は還元糖と蛋白質との間の非酵素的糖化反応の後期段階で生成する構造体の総称で、生体内で存在し、糖尿病血管合併症の発症・進展および神経変性疾患や悪性腫瘍の増殖、転移、浸潤に関与することが明らかとなってきた。しかし、細胞培養および動物実験下での報告が主であり、一般住民を対象とした疫学的研究報告はない。そこで、この検診にてAGEsと身体変量、糖・脂質代謝、血栓マーカーとの関連および予後調査にて脳・心血管疾患の進展との関係を解析し、AGEsがそれらの予知因子となりうるかを検討することで、AGEsの測定が今後の医療現場で様々な疾患の発症予防に寄与する基礎資料を得ることを目的とする。 平成17年度も7月下旬に長崎県宇久町で年一回の住民検診を行った。40歳以上の男女を対象として約200名の住民が受診し、検診内容は身体測定、栄養調査、血圧測定、血液検査(血計・一般生化学検査のほか糖・脂質代謝、高感度CRP、fibrinogen、Plasminogen activator inhibitor-1 [PAI-1]、AGEsなど)、心電図、心・頚動脈エコーなどの検査を施行した。全てのデータを入力し、肥満度・総皮脂厚といった身体変量、糖・脂質代謝、fibrinogen・PAI-1といった血栓マーカーとAGEs値との関連を解析した。 結果、AGEsの平均値は男性が4.11±0.74U/ml、女性が4.10±0.93U/mlであった。単変量解析にて血栓マーカーであるPAI-1(p<0.05)およびfibrinogen(p<0.05)とAGEsと有意に関連性を認めた。さらに多変量解析においても独立してPAI-1(p<0.05)およびfibrinogen(p<0.05)のみにAGEsとの関連が認められた。 今回の研究において、PAI-1およびfibrinogenがAGEsと正に関連することを明らかにした。今後も検診を行いサンプル数を増やし、予後調査を含めた研究解析を継続して行いAGEsと脳・心血管病との関係を解明する予定である。
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