2006 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌に対するVEGF系を標的とした新たな血管新生抑制療法の開発
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17790446
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
深澤 光晴 山梨大学, 医学部附属病院, シニアレジデント (00377508)
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Keywords | 膵癌 / VEGF-Trap |
Research Abstract |
●申請者らの最終的な目標はVEGF-Trap遺伝子を膵癌培養細胞に導入して発現分泌させることによる、新たな血管新生抑制療法の開発である。すなわち、申請者らはVEGF-Trapをマウスに投与することにより、膵癌細胞皮下腫瘍モデルの増殖抑制を報告したが、これを膵癌細胞に遺伝子導入することにより腫瘍組織内に恒常的に高濃度のVEGF-Trapを産生し、より効果的な治療法の開発に結びつけたく考えている。一方、腫瘍におけるVEGFの発現制御メカニズムにおいては未だ明らかではない。本研究では、より効果的な治療法開発のために、VEGF発現制御の機序を明らかにすることを目的とした。VEGFの発現については、膵癌において高頻度に変異が認められる癌抑制遺伝子SMAD4/DPC4との関連が近年示唆されている。すなわち、膵癌組織においてはVEGFとSMAD4の発現強度は逆相関する(J Gastrointest Surg.2005)、あるいはSMAD4の欠損した膵癌細胞株においてはVEGFの発現が亢進する(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000)、などの報告がある。我々は、膵癌におけるVEGF発現制御のメカニズムを明らかにするため、膵癌細胞Panc1を用い、血管新生を含めた膵癌細胞の悪性化においてSMAD4の果たす役割について検討した。まずTGFβ1刺激下で、Panc1細胞におけるE-cadherin、βcatenin、Snail、Slug TGFβ2、VEGFの発現を検討し、さらにSMAD4をsiRNAにてノックダウンした場合の発現変化について解析した。その結果、TGFβ1刺激により、E-cadherin、β cateninの発現は低下、一方、Snail、Slug、TGFβ2、VEGFの発現は亢進し、細胞形態はfibroblastoid様に変化した。一方、SMAD4ノックダウン細胞においては逆に、E-cadherin、βcateninの発現は亢進、一方、Snail、Slug、TGFβ2、VEGFの発現は低下した。これらの結果は既報とは異なっており、特にVEGFの発現制御におけるSMAD4の果たす役割は逆であった。このことからは、VEGFの発現制御には複数の経路が関与することを示唆しており、現在更なる検討を行っている。
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