2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞死抑制活性強化蛋白質による虚血性心疾患及び薬剤性心筋障害の治療
Project/Area Number |
17790505
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
荒川 正行 (財)微生物化学研究会, 微生物化学研究センター沼津創薬医科学研究所・創薬基盤研究ユニット, 研究員 (90398868)
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Keywords | 心筋梗塞 / 虚血再灌流障害 / ネクローシス / アポトーシス |
Research Abstract |
【目的】本研究は、虚血心再灌流障害モデルや薬剤性心筋障害モデルを作製し、これらのモデルを用いて細胞内導入を可能にした細胞死抑制活性強化蛋白質を投与し、心筋細胞死を抑制する新しい治療法を開発することを目的とする。 【結果と考察】本年度は、ラット心摘出虚血再灌流を行い、虚血時間35分、再灌流120分で心筋梗塞部位が47.8%である梗塞モデルを作製した。このモデルを用いて、細胞死抑制活性強化蛋白質に細胞内に導入可能なProtein transduction domain (PTD)を導入した蛋白質の投与法の検討を行った。投与方法は、冠動脈導入と直接心筋投与を行った。その結果、虚血開始直後に、直接心筋投与の方が、虚血35分後に効率よく蛋白質が導入されていることを免疫組織化学的手法により確認した。一方、冠動脈導入では蛋白質の確認ができなかった。この結果から、蛋白質の投与は虚血後、心拍動の停止直後(1分後)と設定し、用いる蛋白質は、生理食塩水で希釈したもの(濃度5,50,500nM、各n=8)を、それぞれマイクロシリンジを用いて左室前壁へ7.5μlを4箇所に投与した。これらの方法より、蛋白質投与群及びVehicle群ともに、35分の虚血・120分の再灌流を行った。実験終了後、各心臓を採取し、2,3,5-triphenyltetrazolium chlolide (TTC)染色によって心筋梗塞領域の定量を行った。その結果、Vehicle群の梗塞率47.8±6.8に対して、蛋白質投与群(50nM)の梗塞率は28.7±3.8%(p<0.05)で、梗塞を有意に抑制した。さらに、心機能の指標の一つである再灌流60分、120分における左室発生圧(LVDP)の回復変化を調べたところ、それぞれ再灌流60分、Vehicle群38.9%に対して、蛋白質投与群(50nM)では59.5%、120分では、Vehicle群32.5%に対して、蛋白質投与群(50nM)では45.6%であり、蛋白質投与群において心機能の回復傾向を認めた。これらの結果を踏まえて、心筋細胞死抑制のメカニズムの追求及び薬剤性心筋障害モデルを作製し、細胞死抑制活性強化蛋白質の効果を検討する予定である。
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