2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞死抑制活性強化蛋白質による虚血性心疾患及び薬剤性心筋障害の治療
Project/Area Number |
17790505
|
Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
荒川 正行 (財)微生物化学研究会, 沼津創薬医科学研究所・創薬基盤研究ユニット, 研究員 (90398868)
|
Keywords | 心筋梗塞 / 虚血再灌流障害 / ネクローシス / アポトーシス |
Research Abstract |
【目的】本研究は、虚血心再灌流モデル及び薬剤性心筋障害モデルを用いて、細胞内導入を可能にした細胞死抑制活性強化蛋白質を投与し、心筋細胞死を抑制する新しい治療法を開発することを目的とする。 【結果と考察】昨年度において、ラット心摘出虚血再灌流による心筋梗塞モデルを用いて、細胞内に導入可能なProtein transduction domain (PTD)配列を導入した細胞死抑制活性強化蛋白質を直接心筋投与した結果、虚血35分、再灌流120分におけるVehicle群の梗塞率に対して蛋白質投与群(50nM)の梗塞率が有意に抑制し、さらに左室発生圧(LVDP)の回復が見られた。本年度は、これらの蛋白質を投与することによる心筋細胞死の抑制のメカニズムの解析を行った。これらの解析に用いたサンプルは、蛋白質投与群及び未投与群のラット心臓を凍結サンプル及びホルマリン固定サンプルとした。これらの組織サンプルを用いて、細胞死の指標に対してアポトーシスをterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated deoxyuridine 5-triphosphate nick-end labeling (TUNEL) assay、さらにアポトーシス関連蛋白質の発現・変化の有無をウエスタンブロット法を用いて、解析を行った。TUNEL assayでは、ホルマリン固定後、パラフィン切片を作製し、その後TUNEL染色を行った。蛋白質投与群では、心筋組織においてTUNEL陽性核の数が6±1/100mm^2であり、Vehicle群(15±1/100mm^2)に対して有意(p<0.01)に減少した。さらに、これら心臓サンプルのタンパク抽出物において、アポトーシス関連蛋白質(Bax, Bcl-xL, VDAC, Caspase3 active form)の変化をウエスタンブロット法により調べた。その結果、アポトーシス誘導蛋白質として知られているBaxは、虚血無し正常灌流では発現が少なく、虚血35分のみで発現が増加することが分かった。Bax蛋白質が増加するモデルを用いて、心虚血35分再灌流120分モデルにおいて、虚血開始1分後に、細胞死抑制活性強化蛋白質を心筋投与を行ったサンプルを用いた結果、蛋白質投与群のBax,Bcl-xL,VDACの発現レベルはVehicle群と比較したところ、発現量に変化は見られなかった。一方、アポトーシス誘導蛋白質の一つであるCaspase3 active formの出現を調べたところ、正常灌流時では現れないが、虚血35分ではっきりと出現し、さらに虚血35分再灌流120分において、その発現が増加した。この同条件下において、虚血開始1分後に蛋白質投与群においてCaspase3 active formの発現をVehicle群と比較したところ、Caspase3 active formの減少が有意に見られた。これらの結果から、細胞死抑制活性強化蛋白質による心筋細胞死抑制のメカニズムは、虚血再灌流によるミトコンドリア経路のアポトーシスを抑制し、心筋細胞保護効果が示された。 現在、in vitroによる心筋保護効果及び薬剤性心筋細胞死の保護効果について検討している。
|