2005 Fiscal Year Annual Research Report
慢性閉塞性肺疾患の病態における炎症関連因子の遺伝子学的検討-欧米人との比較
Project/Area Number |
17790537
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉川 貴仁 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10381998)
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 喫煙感受性 / 好中球 / 気道炎症 / 化学遊走 / 誘発喀痰 / SNP |
Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、全喫煙者の約10%の‘喫煙に対する感受性'を持つ群にのみに発症する、末梢肺構造が慢性的に破壊される疾患である。我々はその病態の進行において注目されている好中球主体の気道炎症の成立のメカニズムについて、健康喫煙者と疾患群(喫煙感受性群)に分けて検討している。また、この結果を英国での結果と比較して欧米と我が国の同疾患の成り立ちの差異も検討している。また、この疾患と炎症性マーカーに関連した遺伝子多型の解析を予定している。今年度は、その準備として我が国で下記の実験を行い、英国の結果と比較検討している。 (1)喫煙感受性の有無(COPD発症・非発症)による好中球活動の差異の検討 健康喫煙者(喫煙非感受性群)の末梢血好中球を対照群(n=7)にして、軽症から重症COPD発症患者(喫煙感受性群)(n=12)の末梢血好中球がもつ既知の化学遊走因子(f-MLPやIL-8)に対する化学遊走活性を重症度別に検討した。血液好中球の遊走能はCOPD重症例では軽症例及び健康喫煙者に比べて著しく低下しており、一秒率は好中球遊走能と相関関係を示した。 (2)喫煙感受性の有無による気道分泌物の有する能力の差異の検討 健常非喫煙者由来の末梢血好中球を使って、軽症から重症COPD発症患者(喫煙感受性群)の気道分泌液(高調食塩水吸入により得られた誘発喀痰)がもつ好中球刺激活性化学遊走活性を重症度別に検討した。COPD重症例の喀痰は軽症例及び健康喫煙者の喀痰に比べて好中球を遊走させる能力が著しく低下していた。 以上の結果は英国で得られた結果と類似している。現在このことを含めて英文雑誌に投稿中である。 患者喀痰中には好中球が多いことから好中球性気道炎症が病態の中心であることには違いないが、その成立には、英国の患者と同様に好中球遊走以外の(炎症細胞の生存期間延長などの)メカニズムが関わっている可能性が示唆された。
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