2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性に伴うニューロン・ミクログリア間の応答因子の探索
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17790577
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 英之 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (30362213)
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Keywords | 神経変性 / ニューロン / ミクログリア / グルタミン酸 / サイトカイン / 興奮性神経毒性 / 神経細胞機能不全 / neuritic beading |
Research Abstract |
神経変性の病態の大きな特徴として、ニューロン死に至る以前にニューロン自体の機能が十分に発揮されない、いわゆる神経細胞機能不全の状態が長く存続することが挙げられる。 我々は、経時的解析から、ニューロンの神経突起のビーズ状変性(neuritic beading)が神経細胞機能不全の初期現象として観察できることを明らかにした。その機序としては、各種の傷害刺激により活性化した神経傷害的ミクログリアが大量のグルタミン酸を放出し、グルタミン酸シグナル伝達を介して神経細胞のミトコンドリア呼吸鎖を抑制することで細胞内ATPの低下を生じ、このエネルギー欠乏による軸索輸送の破綻が、モータータンパクや細胞骨格タンパクの軸索での滞留を来たし、形態上、neuritic beadingとして顕在化するものと判明した。神経細胞機能不全の少なくとも初期段階では、症状は可逆的であり、病態に置き換えれば、治療可能な時期(いわゆるtherapeutic window)であると考えられる。この細胞機能不全の状態が存続することで不可逆的なニューロン死に至ると考えられ、活性化ミクログリア由来のグルタミン酸による興奮性神経毒性が神経変性におけるニューロン死に極めて大きく関与していることが判明した。 以上から、neuritic beadingは、従来困難であった神経細胞機能の評価マーカーとして極めて有用であると考えられ、我々はこの指標を含めた、ニューロン・グリア細胞双方向の応答を扱える、ニューロン・グリア細胞の共培養系による新規神経系細胞機能評価システムを構築し、特許を出願した。 現在、この新規評価系を利用して、各種薬物のニューロア・グリナ細胞への影響の評価、therapeutic windowの把握や治療反応性の評価を行い、ニューロン・グリア細胞間の応答因子を探索・同定し、神経変性の病態解明および治療法開発をさらに進めている。
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