2005 Fiscal Year Annual Research Report
破骨細胞分化におけるMAPキナーゼの階層的分化制御と生体機能の解明
Project/Area Number |
17790612
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松本 征仁 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90321819)
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Keywords | 破骨細胞 / RANKL / MAPキナーゼ / 骨吸収 / NFATc1 / 転写因子 |
Research Abstract |
破骨細胞は骨吸収を行い、必要に応じて骨基質に貯蔵されたカルシウムなどのミネラル成分の動員を行い骨代謝の恒常性を維持するため、骨合成とのバランスが極めて厳密に調節されている。しかしながら、骨破壊の亢進による骨代謝維持機構の破綻により骨粗鬆症などの骨代謝疾患が引き起こされるため、高齢化社会が急速に進行する社会的背景からも破骨細胞の制御機構の分子機序解明は必要不可欠である。 研究代表者はこれまでp38MAPキナーゼが破骨細胞分化に重要であること、そして転写因子NFATc1をリン酸化し、PU.1とMITFとともに破骨細胞マーカーであるカテプシン遺伝子の協調的な転写活性化に寄与しすることを見出した。これらの結果よりp38MAPキナーゼを介した多段階制御モデルと破骨細胞分化の特異性決定機構が明らかにされた。実際、p38MAPキナーゼがカテプシンKのみならず、その他の破骨細胞マーカー遺伝子の発現に寄与することを見出しており、上述のモデルが一般性を失うもではないと考えられる。さらに、破骨細胞分化のマスター制御因子NFATc1の発現にもp38MAPキナーゼが重要であることが明らかとなり、このことは破骨細胞分化過程においてNFATc1の発現ならびに転写因子として機能を果たす時にも、p38MAPキナーゼが多段階で制御することを示唆している。最近、破骨細胞内に転写因子Pax3,6が発現することを見出し、pax6が酒石酸耐性酸性フォスファターゼ(TRAP)遺伝子の発現を制御すること、さらにレトロウイルスベクターを用いて初代培養の破骨細胞にpax6を高発現させた結果、破骨細胞数が減少することを見出した。これらの結果は、破骨細胞分化が亢進し過剰な骨破壊を防ぐために備わっている新たな自己制御機構であると推測される。 一方、これまで明らかにされたシグナル伝達機構ならびに破骨細胞分化の抑制を指標にして、昆虫由来の抗菌性化合物が破骨細胞の分化を量依存的に強力に抑制することを見出した。興味深いことに、この化合物はカテプシンK, TRAPなど殆ど全ての破骨細胞マーカー遺伝子の発現を抑制しすること、RANKLによるp38MAPキナーゼのリン酸化を抑制し、p38MAPキナーゼよりも上流の細胞内シグナル伝達機構を阻害することにより破骨細胞分化を抑制していると考えられ、破骨細胞の分化・機能を制御することが証明できれば、新たな骨代謝疾患の治療薬としての有効性が期待される。
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