2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋でのインスリン感受性を高める視床下部オレキシンの調節作用とその生理的意義
Project/Area Number |
17790634
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
志内 哲也 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助手 (70372729)
|
Keywords | オレキシン / 交感神経系 / 糖代謝 / 視床下部 / 骨格筋 |
Research Abstract |
本研究では、視床下部オレキシンによる代謝調節機構ならびにその意義について、骨格筋におけるグルコースの取り込みに焦点を当て検討した。摂食量および自発運動量に影響を与えない濃度のオレキシンAをマウスあるいはラットの内側視床下部に投与すると、血漿インスリン濃度の変化を伴わずに、骨格筋において顕著にグルコースの取り込みが上昇した。この効果は、交感神経系阻害剤であるグアネチジンの腹腔内投与、あるいは内側視床下部へのオレキシン受容体アンタゴニストの投与により、減弱した。また、内側視床下部へのオレキシン投与により、骨格筋におけるノルエピネフリンの代謝回転が亢進した。さらに、視床下部オレキシンのグルコース取り込み促進作用は、アドレナリンbeta受容体ノックアウトマウスでは起こらなかった。しかし、electropolation法によりbeta-2受容体を骨格筋に発現させると、オレキシンの作用が回復した。 サッカリンなどの甘味刺激を行うとオレキシンニューロンが活性化することが報告されている。そこでマウスに自発的な10mMサッカリン溶液の摂取をさせた後、インスリンを静脈内投与し、骨格筋でのグルコース取り込みに対する影響を調べると、サッカリン摂取により、インスリンによる骨格筋でのグルコース取り込みの増強がみられた。興味深いことに、この作用は内側視床下部にオレキシン受容体アンタゴニストを投与することにより消失した。 以上の結果より、オレキシンは内側視床下部に作用して交感神経系を活性化し、アドレナリンbeta-2受容体を介して骨格筋におけるインスリン感受性を増強、グルコースの取り込みを促進することが明らかになった。また、このオレキシンの作用は、味覚(甘味)刺激によって活性化され骨格筋でのグルコースの取り込みを促進すると考えられる。
|