2006 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的手法を用いた転写因子Runx1の造血幹細胞発生における機能の解析
Project/Area Number |
17790655
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
牧 和宏 獨協医科大学, 医学部, 講師 (50337391)
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Keywords | RUNX1 / EVI1 / 白血病発症 / 染色体転座 / トランスジェニックマウス / 白血病モデルマウス |
Research Abstract |
Runx1-EvilはAML(M7)やCMLの巨核芽球性急性転化に出現が認められる融合遺伝子である。Runx1-Evilは、RUNX1に対するドミナントネガティブ効果を有するとともに、EVI1部分に由来する造腫瘍活性(TGFβシグナルの抑制、AP-1活性の刺激、JNKの抑制)を有するため、白血病発症に重要な役割を持つと考えられる。そこで、平成17年度に作製した6匹のRunx1-Evi1ノックインキメラマウスについて、白血病発症の有無につき解析した。6匹のキメラマウスは、いずれも寿命より早期の突然死が観察された。7ヶ月以降に死亡した5匹のマウスには明らかな解剖学的異常を認めなかったが、5ヶ月で死亡した1匹のマウスは著明な肝脾腫を呈していた。脾臓のスタンプ標本では、大型の異型細胞の著明な浸潤が認められ、その一部は多核を有する大小様々な巨核芽球様細胞であった。脾臓の病理学的な検討では、巨核球様の多核細胞を含む大型の異型細胞の浸潤とそれに伴う脾髄構造の破壊が認められ、肝臓では反応性好中球を主体とした門脈域への高度な細胞浸潤と、DICに伴うと思われる門扉内の多数のフィブリン血栓を認めた。さらに電子顕微鏡検査(PPO染色)にて、脾臓に浸潤した多核細胞が巨核球系細胞であることが確認された。以上の結果より、このキメラマウスは急性巨核芽球性白血病を発症したと考えられた。このことは、Runx1-Evi1はRux1-ETOとは異なりone hitで白血病を発症しうることを示唆している。また、Runx1-Evi1は白血病の表現型を巨核球系統に決定している可能性がある。Runx1-Evi1型白血病においてはEvil部分もその発症に重要な役割を担っていると考えられた。
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