2007 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的手法を用いた転写因子Runx1の造血幹細胞発生における機能の解析
Project/Area Number |
17790655
|
Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
牧 和宏 Dokkyo Medical University, 医学部, 講師 (50337391)
|
Keywords | RUNX1 / EVI1 / ノックインマウス / 白血病 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
転写因子Runx1(AML1)の造血幹細胞発生における機能を解析する目的で、AML1の磯能をドミナントに抑制するAML1/EVI1キメラ遺伝子をマウスAML1 locusにノックインしたAML1/EVI1ノックインマウスを作製し解析した。 1.AML1/EVI1ヘテロノックインマウスは胎生致死であった。2.胎仔肝での成体型造血の欠如を認めた。3.造血コロニーアッセイでは、ヘテロマウス胎仔肝では赤芽球系のコロニーは全く観察されなかった。また、ヘテロマウス胎仔肝にはより高い自己複製能を持つ造血前駆細胞の存在が碓認された。4.胎仔肝における造血系転写因子の発現について、半定量的RT-PCRにて解析した。AML1/EVI1ヘテロマウスの胎仔肝において、AML1ノックアウトマウスと異なり、Pu.1の発現が維持されることにより、自己複製能の高い造血前駆細胞が増加している可能性が示唆された。 今回我々は、6匹のAML1EVI1ノックインキメラマウスを作製したが、いずれも寿命より早期の突然死が観察された。7ケ月以降に死亡した5匹マウスは明らかな解剖学的異常を認めなかったが、5ケ月で死亡した1匹のマウスは著明な肝脾腫を呈していた。脾臓のスタンプ標本では、大型の異型細胞の著明な浸潤が認められ、その一部は多核を有する大小様々な巨核芽球様細胞であった。脾臓の病理学的な検討では、巨核球様の多核細胞を含む大型の異型細胞の浸潤とそれに伴う脾髄構造の破壊が認められ、肝臓では好中球を主体とした門脈域への高度な細胞浸潤と、DICに伴うと思われる門脈内の多数のフィブリン血栓を認めた。さらに電子顕微鏡検査(PPO染色)にて、脾臓に浸潤した多核細胞が巨核球系細胞であることが確認された。以上より、このキメラマウスは急性巨核芽球性白血病を発症したと考えられ、白血病発症におけるAML1/EVI1の重要性が確認された。
|