2005 Fiscal Year Annual Research Report
早期老化モデルマウスを用いたエネルギー産生機能異常の分子基盤解明
Project/Area Number |
17790733
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
秋田 幸大 久留米大学, 医学部, 助手 (20330821)
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Keywords | 老化 / 遺伝子 / ミトコンドリア / エネルギー全般 |
Research Abstract |
本研究は、単一遺伝子欠損による老化モデルであるKlotho遺伝子欠損マウスを用いて老化の分子機構・生命維持機構の理解、さらに老化疾患の成立に関連する遺伝子群の解明を目的としている。このマウスにおける老化症状の進行状態とミトコンドリアエネルギー産生機能の関係に焦点を絞り、生化学的(各組織の酵素活性・酸素消費量)・組織学的(光顕・電顕所見)解析を行った。対象は、雌雄のklotho遺伝子欠損マウス、週令1週,4週,7〜8週,22〜24週の表現Homo, Hetero, Wildマウスを用いた。週数・表現型別に骨格筋(大腿筋)、心筋、腎etcの病理組織学的検討を行った。特徴的な光学顕微鏡所見(骨格筋;大腿筋)としては、7週齢・ホモ個体にて、筋線維が小径であり散在性に活性の低下している線維(focal Cox deficiency)を認めた。電子顕微鏡検査(心筋)においては、7〜8週齢・ホモ個体にて、形態的にミトコンドリアは小さく、クリステは不明瞭で一部に壊れた部分を認めていた。以上の結果は、ミトコンドリアエネルギー代謝機能の低下を示唆するものであり、細胞のエネルギー危機を招き、老化や細胞死に関わっていると推測された。 また、ヒトにおけるミトコンドリア病は、ミトコンドリアのエネルギー産生系酵素の遺伝的異常により引き起こされる難治性進行性疾患である。病型の中に、小児期に発作性の頭痛、嘔吐、半身けいれんで発症する病型としてミトコンドリア脳卒中(MELAS)があり、全ての症例において早老症状が認められ短命である。今回、MELAS患者の治療薬として、L-アルギニンが血管内皮機能改善に有効である事を報告した。これらの研究成果は、マウスを始めとするヒトの老化や寿命を規定するメカニズムに関する基礎研究に、大きく寄与出来ると考えられた。
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