2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト皮膚器官培養系を用いたカルシウムポンプ病の実験モデル作成と遺伝子発現解析
Project/Area Number |
17790785
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黛 暢恭 順天堂大学, 医学部, 講師 (80333045)
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Keywords | カルシウムポンプ病 / ダリエ病遺伝子 / 皮膚器官培養系 |
Research Abstract |
これまでの報告ではダリエ病は夏季の発汗時や紫外線照射後に皮疹が増悪することが知られている。そこで、まず皮膚角化細胞で発現し、角化・増殖に関与するとされている小胞体膜上のカルシウムポンプSERCA2(ダリエ病遺伝子ATP2A2がコードする)に対する紫外線の影響を検討するため、正常ヒト皮膚培養角化細胞を用いて紫外線照射を行い、同遺伝子のmRNAの発現量の推移を観察した。照射数時間後より著明な発現抑制がみられた。さらに紫外線照射等により産生されると考えられている種々の炎症性サイトカインの添加により、特にIL-6の影響で著明なmRNAの発現低下がみられた。以上のことは臨床症状を併せて鑑みると、現在、ダリエ病の発症メカュズムとして考えられている"haplo-insufficiency"を支持するものであると考えられた。同様に紫外線照射後に、これまでの報告でグリエ病に効果があるとされた薬剤(副腎皮質ホルモン剤やレチノイドなど)を添加した培養液で紫外線照射後の経過を見たところ、紫外線照射によるATP2A2のmRNAの発現低下が抑えられていた。つまり発現量の低下を抑えた効果により治療効果が発揮されているという裏付けが遺伝子発現レベルで証明されたことは、以上の方法が今後ダリエ病の治療に使用する目的で検討される新規薬剤の効果判定に試験管内で証明可能な実験方法であると考えられた。 さらに、正常ヒト皮膚を用いた器官培養ではカルシウムポンプSERCAを特異的に抑制するthapsigarginの添加によりダリエ病類似の病理像が見られた。現在、同モデルでのダリエ病遺伝子mRNA発現を確認している。さらにRNAiの効果による器官培養系の作成を進めており、これらが完成されれば、SERCA2以外のタンパクレベルでの発現が観察可能になると考えられ、発症メカニズムの解明に更に近づくものと考えている。
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