2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳血管性うつ病の長期的な機能障害に重要な役割を果たす要因の検討
Project/Area Number |
17790813
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山下 英尚 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (50294591)
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Keywords | 脳血管性うつ病 / 長期予後 / 認知症 / 機能的MRI / 前頭葉機能低下 |
Research Abstract |
I.脳血管性うつ病(VD)の長期予後についての検討 平成2年度から平成11年度の間に入院治療をおこなった50歳以上発症の大うつ病患者のうち、治療時に頭部MRIを施行され、初回入院治療であった89例の患者を対象とした。MRI所見から対象をVD群およびnon-VD群に分け、両群の間で経過観察期間中のうつ病相の期間、回数、入院回数、脳卒中、パーキンソニズム、痴呆、その他の身体疾患、死亡などの予後について比較をおこなった。 VD群ではnon-VD群と比較してうつ病相期間(平均2.6年対1.3年)、入院回数(平均1.1回対0.4回)ともに有意に多く、経過観察期間中に認知症を発症した割合(18%対4%)も有意に高かった。脳卒中、パーキンソニズムの発症、経過観察期間中の死亡もVD群で高かったものの有意ではなかった。 この結果からVDではうつ病自体の長期的予後が低く、持続的な器質性の認知障害をきたしやすいことが明らかとなった。認知症への進展はnon-VD群では4%と同年代の健常高齢者と同程度であり、老年期うつ病の中でも特にVD患者において認知障害に注意しながら治療をおこなっていく必要性が示唆された。 II.脳血管性うつ病(VD)における認知情報処理に関る脳機能と病態の解明 50歳以上で発症したVD患者2例(男性女性各1例、平均年齢54歳)、脳血管障害を合併していないうつ病患者(non-Vascular Depression : non-VD)2例、年齢、性別、聞き手をマッチさせた健常対照者2例を対象にfunctional MRIを用いてWord Fluency Test施行中に活性化が認められる領域を同定し、各群で比較した。少数例で予備的な結果ではあるが、うつ病患者では健常対照者と比較して課題遂行中の左前頭前野の活性化領域は小さく、VDではnon-VDと比較して更に活性化領域が小さい傾向が認められ、左前頭前野の活性化の低さがVDの予後の悪さに関連している可能性が示唆された。
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