Research Abstract |
統合失調症との関連を明らかにしたRELN多型について,生物学的な分子機構を解析するため,死後脳でのmRNAおよびタンパク質発現変化を解析し,多型の遺伝子発現への影響を検討した.Reelin蛋白質は,皮質形成に関与する細胞遊走の制御や層構造の配置決定に重要な働きを担う分子として知られている.これまでに,統合失調症患者の死後脳ではReelin蛋白質とmRNAの減少が報告され,何らかのReelin分子の機能異常が統合失調症の病態へ関与している可能性が示唆されている.我々は,RELN遺伝子の全領域を網羅する多型を用いて患者・対照研究を実施した結果,イントロン領域に位置する4箇所の多型が統合失調症と有意に関連することをはじめて同定し,IVS5-3C - IVS7+76C - IVS7+186_189AATTdel - IVS17+94Aから構成されるハプロタイプが統合失調症脆弱性に関与することを明らかにした.興味深いことに,これら4多型のうちの3つはアロ抗体CR50のエピトープ部分をコードするエクソンの近傍に位置していた.そこで,これら多型のスプライシングへの影響をRT-PCR法により検討した結果,エクソン9が欠失した転写産物をはじめて同定した.さらに,Real-time PCRにより,エクソン9が欠失したmRNA発現レベルを定量したところ,健常対照群と比較して,統合失調症群で増加傾向にあることが明らかとなった.また,エクソン9の選択的スプライシングの結果,フレームシフトによる302アミノ酸からなるTruncated formが産生されることが予測された.そこで,統合失調症死後脳から得たタンパク質画分について,タンパク質発現をWestern blotting法により検討した結果,Truncated formと推定されるシグナルが確認されたことから,Truncated formの増加が病態へ関与する可能性が示唆された.
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