2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17790873
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
浅川 勇雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (20382319)
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Keywords | p53 / 分子シャペロン / apoptosis / 放射線治療 / 増感 |
Research Abstract |
癌抑制遺伝子p53以外の遺伝的背景をそろえるために、正常型p53を保有するヒト舌扁平上皮癌細胞株(SAS)に電気穿孔法により、コントロールベクター(pCMV-Neo-Bam:SAS/neo)および変異型p53遺伝子発現ベクター(pC53-248,codon248,Arg→Trp:SAS/mp53)を導入した2種の細胞株を作製した。これらをヌードマウス(Balb/cAJcl-nu、6週齢、雄)の大腿皮下に移植し、腫瘍径が約6-7mm程度になった時点で実験を開始した。グリセロールは推定腫瘍重量の1/2量を放射線(X線)照射24時間前、放射線照射直前、放射線照射24時間後に腫瘍内に局所注射した。グリセロールに対するコントロールは生理食塩水とした。放射線照射は2Gyとした。その後経時的に腫瘍径を計測し、相対腫瘍重量を求め、対照群に対するグリセロール処理群の相対腫瘍重量が5倍に到達するまでの日数から相対腫瘍成長遅延時間を算出した。 腫瘍重量は以下の式で求めた。 推定腫瘍重量(TW)(mg):TW=L×W^2/2(L:長径mm、W:短径mm) 相対腫瘍重量(RW):RW=TWn/Two(TWn:各測定時推定腫瘍重量、TWo:治療開始時推定腫瘍重量) SAS/neoでは生理食塩水、グリセロール処理群とも、放射線非照射では約11日、放射線照射では約17日であり、生理食塩水とグリセロールでの差は認められなかった。SAS/mp53では生理食塩水群では放射線による成長遅延が認められなかったが、グリセロール処理群では約16日と遅延しており、変異型p53細胞でも腫瘍の増殖抑制効果が認められた。 さらに腫瘍組織内のapoptosisの動態について、処理後72時間目に腫瘍を摘出し、免疫組織化学的にも検討した。SAS/neoでは、生理食塩水とグリセロール処理群で放射線照射後のapoptosis陽性細胞の割合は7-8%程度と有意差は認められなかった。SAS/mp53では生理食塩水群ではほとんどapoptosisは認められなかったが、グリセロール処理群ではapoptosis陽性細胞の割合はSAS/neo細胞と同等となった。 以上より放射線治療抵抗性の変異型p53腫瘍においてもグリセロールの局所投与により、放射線によるapoptosis誘導、並びに抗腫瘍効果が期待できると考える。
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