2005 Fiscal Year Annual Research Report
MICAによる癌免疫逃避機構の解明と消化器癌ワクチン療法の効果増強
Project/Area Number |
17790917
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
齊藤 博昭 鳥取大学, 医学部, 助手 (20335532)
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Keywords | MKG2D / MICA / 胃癌 / 食道癌 / 免疫逃避機構 |
Research Abstract |
免疫レセプターであるNKG2DはCD8Tリンパ球やNK細胞に発現しており、リガンドによる刺激はこれらの細胞を刺激して悪性腫瘍に対する免疫を誘導することが報告されている。一方でGrohらは担癌患者のCD8Tリンパ球のNKG2D発現が低下しており、このことが細胞性免疫の誘導を抑制している可能性を報告した(Nature 2002;419,734-738)。そこでCD8Tリンパ球のNKG2D発現をコントロールすることにより有効な免疫治療の開発を行うことを目的に現在まで検討を行ってきた。これまでのわれわれの検討で以下のことが明らかになった。 1.末梢血から分離したCD8Tリンパ球のNKG2D発現をフローサイトメトリーにて検討したところ癌患者(胃癌・食道癌)において健常成人と比較して有意な低下が認められた。この低下は進行癌ほど著明であった。 2.担癌患者におけるCD8Tリンパ球のNKG2D発現低下の原因を検索することを目的に健常成人および癌患者の血中可溶性MICA濃度をELISAにより測定したところ癌患者において可溶性MICA高値例が認められたが実際にCD8Tリンパ球のNKG2D発現低下を誘導するほどの高値例は認められなかった。 3.CD8Tリンパ球のNKG2D発現低下は癌細胞が分泌する液性因子により誘導されるのではなく癌細胞との接触によって誘導され、細胞膜表面に発現するMICAが原因であった。このことを裏付けるように腫瘍局所のCD8Tリンパ球のNKG2D発現は末梢に比較して有意に低下していた。 4.CD8Tリンパ球のNKG2D発現をsiRNAを用いて抑制したところ、IFN-γ産生能の低下が認められた。 5.手術により腫瘍を完全に取り除いた後、CD8Tリンパ球のNKG2D発現は有意に上昇した。 以上のことから腫瘍が細胞膜表面に発現するMICAはCD8Tリンパ球のNKG2D発現を抑制し免疫から逃避している可能性が示唆された。現在われわれは腫瘍に発現されているMICAを制御することにより有効な免疫治療を開発することを目的にさらなる検討を行っている。
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