2006 Fiscal Year Annual Research Report
血小板由来内皮細胞成長因子の血管新生における作用発現機序の解明
Project/Area Number |
17790943
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
高森 督 福井大学, 医学部, 助手 (80397273)
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Keywords | PD-ECGF / VSMC / proliferation / migration / gene therapy |
Research Abstract |
血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF/Thymidine Phosphorylase;以下TP)の血管平滑筋細胞に対する作用機序を解明すべく研究を行った。 ラット血管平滑筋細胞にヒトTP遺伝子を導入し、ヒトTP高発現細胞株を作成した。同時に対照ベクターを導入した細胞株も作成した。こうして得られた各細胞株を用い、以後の実験を行った。 先ず基礎実験として、細胞増殖能をMTT assayにて検討した。結果、TP高発現細胞において増殖能が対照群に比べ有意に低下していること、またその作用はTP阻害剤によって阻害されることを明らかにした。次いで細胞遊走能をwound healing assayにて検討した。結果、TP高発現細胞では遊走能も対照群に比べ有意に低下していることを明らかにした。 これらのことを踏まえ、いくつかの遺伝子に注目しmRNAレベルでの遺伝子発現の差異を定量PCR法を用いて検討した。ひとっはKLF5(BTBB2/IKLF)遺伝子であった。これは血管平滑筋細胞においてその増殖を調節する遺伝子と考えられており、TP高発現細胞株ではこの遺伝子の発現が対照細胞株よりも有意に低下していた。もうひとつは、肌F5遺伝子の発現を誘導すると考えられているEgr-1遺伝子であり、これも同様にTP高発現細胞株で発現が有意に低下していることを確認した。これらのことは基礎実験の結果を裏付けるものであり、TP遺伝子の平滑筋細胞に対する作用機序がMAPK pathwayを介していることを示唆するものとなった。更にその下流遺伝子と考えられるPDGF-AやTGF-β、cyclin-D1についても同様の検討を行ったが、これらについては有意差を認めなかった。 蛋白レベルでの評価についても同様に施行したところmRNAと同様な結果を得るに至った。 これらのことより、TP遺伝子は血管平滑筋細胞において、Egr-1及びKLF5遺伝子の発現を調節し、細胞増殖能を低下させていると考えられた。
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