2006 Fiscal Year Annual Research Report
肺腺癌の発癌過程における結節性硬化症遺伝子の関与の解明
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17790944
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
高持 一矢 浜松医科大学, 医学部付属病院, 医員 (30397369)
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Keywords | 肺腺癌 / 結節性硬化症遺伝子 / ゲフィチニブ / EGFR / mTOR |
Research Abstract |
(H18年度の研究成果) 近年、肺癌に対する分子標的治療薬Gefitinib(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)が注目されている。結節性硬化症(TSC)遺伝子はPI3K-Akt経路の下流でmTORを制御している癌抑制活性を持つ分子であるが、PI3K/Akt/mTOR経路はThyrosine kinase receptor(EGFR/PDGFR)にシグナルが伝達されることから始まる。本年度の主な研究は、肺癌切除材料を用いたEGFR/PI3K/Akt経路の分子の異常の解析であり、以下の興味深い結果が得られた。 【方法】非小細胞肺癌切除症例96例を対象に、EGFRシグナル伝達関連遺伝子(EGFR、KRAS、PIK3CA)の変異をPCR-direct sequence法、各遺伝子(を含むBAC)の増幅をFISH法にて検索した。 【結果】変異の頻度はEGFR(22/96:23%)、KRAS(2/96:2%)、PIK3CA(3/96:3%)、増幅の頻度はEGFR(26/96:27%)、KRAS(10/96:10%)、PIK3CA(19/96:20%)であった。55例(57%)においていずれかの遺伝子異常が認められた。遺伝子異常の頻度と病理病期に相関は認められず、EGFRシグナル伝達関連遺伝子の異常は肺癌発生の早期から関与する可能性が示唆された。EGFR遺伝子の変異は、女性、非喫煙者、腺癌症例に、対照的にPIK3CA遺伝子の増幅は、男性、喫煙者、扁平上皮癌症例により高頻度に認められた。 (論文) Gefitinibが著効し完全切除が可能になった局所進行肺腺癌の2症例について、EGFR変異の検索結果と併せて報告した。世界初のGefitinibによる術前治療後の肺癌切除例の報告であり、EGFR変異陽性の局所進行肺癌に対する新たな治療戦略の可能性が提示できた。
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