2005 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷に対するアデノウイルスベクターを用いた逆行性神経栄養因子遺伝子導入の検討
Project/Area Number |
17790997
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
中嶋 秀明 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (10397276)
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Keywords | 脊髄損傷 / アデノウィルスベクター / 神経栄養因子 / 逆行性遺伝子導入 / 遺伝子治療 / 前角部運動神経細胞 |
Research Abstract |
神経栄養関連因子のsupplementation効果は脊髄再生に必要不可欠な要素のひとつと考えられる。臨床応用を視野に入れると、より重要な点はいかに効率よく安全に脊髄内に神経栄養因子を導入するかという点である。我々は、頚髄損傷モデルを用い、頚髄に分布する副神経脊髄核のtarget organである胸骨乳突筋から逆行性にadenovirus vectorを用いてBDNF遺伝子を導入し、圧迫後残存ニューロンに対する生存維持、再生能力の賦活化効果について検討を行った。 β-galactosidase、mouse BDNF遺伝子をそれぞれ組み込んだ非増殖型adenovirus vector(AdV-LacZ,AdV-BDNF)を作製した。SD rat(8-10週)を用い、C3,4椎弓切除後、硬膜上に35g,5分間圧迫を与え頚髄圧挫モデルを作成した。損傷直後に胸骨乳突筋よりAdV-BDNF 100μlを注入し、AdV-LacZ 100μlを注入したratをcotrolとした。注入後経時的(3日-4週)に評価を行った。残存neuronの評価として頚髄全体のNissl染色、抗ChAT, AChE抗体陽性前角細胞数をcountした。抗BDNF抗体を用いた免疫染色及びWestern blottingにて発現の程度を調べた。BDNF発現は、AdV-LacZ注入ラットでは、注入後3日でわずかに認めるのみであったが、AdV-BDNF注入ラットでは、注入後1-2週をピークに全経過にわたり有意に強い発現を認めた。注入後2週以降のBDNF導入ラットでは、controlに比しNissl染色陽性細胞数、ChATおよびAchE活性の減少が抑制されていた。また、各染色陽性細胞は、特に損傷近傍部で活性が著明であった。 筋肉内から軸索流にのり逆行性にmotoneuronへ導入されたBDNFは、損傷脊髄に非侵襲的、選択的、効率的に導入可能であり、かつ長期間の神経栄養因子の神経保護効果が期待され、圧迫後残存neuronに対する生存維持、再生能力の賦活化に寄与している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)