2006 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷後の神経機能再生時における血液-脳関門再形成の分子機構
Project/Area Number |
17791003
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉鷹 輝仁 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (20397897)
|
Keywords | 脊髄損傷 / 基底膜 |
Research Abstract |
脊髄損傷を病理学的に考察すると、最初の衝撃による神経細胞の死滅、血管の破裂、血液脊髄関門の崩壊、軸索の断裂などの一次損傷と、損傷部位周囲に急性炎症の波及で起こる二次損傷に分けることが出来る。一次損傷の程度は受傷時に決定するため、脊髄損傷の治療において二次損傷の抑制は非常に重要な治療戦略となっている。損傷後の脊髄では破綻した血液脊髄関門から炎症細胞が浸潤し、二次損傷の拡大につながるとされているが、この詳細なメカニズムは不明であった。 血液脊髄関門は血管内皮細胞、基底膜、アストロサイト終足によって構成される。これらのうち特に基底膜の変化に着目し、炎症細胞浸潤の関係について研究を行った。マウスを用いて、NYU impactorによる胸髄圧挫損傷モデルを作成した。損傷後、経時的に光学顕微鏡による蛍光免疫染色法による組織観察ならびに電子顕微鏡による超微細構造の観察を行った。 炎症細胞が浸潤する炎症巣における局所的な基底膜変化種々の抗体を用いて免疫染色した。損傷後初期から晩期にいたるまで損傷部の周辺で基底膜が二重に分かれている血管が存在した。急性期にはこの二重基底膜間およびその周囲に炎症細胞が浸潤していた。晩期には二重基底膜の外周でグリア境界膜の再形成が完了し、炎症細胞は二重基底膜間にのみ限局する傾向が見られた。 本研究を通じて、「損傷後の脊髄では血管周囲の基底膜が二重に分かれるという組織学的な変化が起こっており、この変化が炎症細胞浸潤ひいては二次損傷に関与している」ということを明らかにした。
|